巻頭インタビュー 私の人材教育論 トッパンフォームズ 代表取締役社長 櫻井 醜 年齢、立場に関係なく強みを伸ばし合い協働する 「品格のある組織」への挑戦
2015年に創立50周年を迎えるトッパンフォームズ。
新時代に向け、創造的革新を遂げるためには、
「品格のある組織」へと脱皮することが必要だと櫻井醜社長はいう。
櫻井社長のめざす「品格のある組織」と、その実現に向けた取り組みとは。
いけないことはいけないとはっきり指摘し合える組織
――貴社は2015年6月に創立50周年を迎えられますが、その50周年目に当たる2016年3月期に、売上高2500億円、営業利益150億円の目標を掲げ、新たな成長の基礎固めに取り組んでおられます。その取り組みについてお聞かせください。
櫻井
私が日頃社内で伝えているのは、「強い組織をつくろう」ということです。強い組織というのは、「コミュニケーションがとれている」「景気低迷下でも着実に業績を伸ばしている」など、条件はさまざまですが、そうした条件を総合的に満たした組織が「強い組織」だと考えています。
強い組織になるためには、基本がしっかりできることが肝心です。たとえば、工場での基本はというと、「“5S”といわれる整理、整頓、清掃、清潔、躾ができていること」「機械の保守と機能の維持がなされていること」などが挙げられます。同様に、企業経営においても、コンプライアンスの徹底を推進することが重要です。
もうひとつ、強い組織をつくるうえで大切なのは、「“やってはいけないことをやってはいけない”といえること」です。これは極めて当たり前のことのように思われるのですが、組織の中にいると、当たり前のことがなかなかできないことがある。ですから私は、「従業員一人ひとりが、物事を真摯に捉えて、役職や性別年齢に関係なく自分の意見を堂々と述べ、侃かんかんがくがく侃諤諤の議論をし、お互いに認め合いながら、みんなが切磋琢磨する」、そんな分別のある大人の組織」―― 別の表現をすれば「品格ある組織」をつくりたいと思っているわけです。
――なぜ、品格ある組織にすることが大切なのでしょうか。
櫻井
これまで企業を評価する軸は、売り上げや利益といった業績でした。しかし、これからの少子高齢化社会においては、内需も今までのようなペースで拡大していくことはない。そうなると、これからの企業には、社会にとって本当に必要な存在であるかが問われるようになると思います。優れた商品やサービスを提供することはもちろんですが、それ以外にも、男女の区別なく皆が働きやすいといったことや、環境にも優しい会社であるといった企業の“品格”が評価の軸になり、企業の存続にも影響力を及ぼす要素になると考えています。
もうひとつ、価値創造型企業へと変革するうえでも、品格ある組織になることは重要です。当社が展開している事業の領域は、帳票類などのビジネスフォームの印刷から、お客様からデータをお預かりして工場内でプリントするデータ・プリント・サービス、IC関連、Web関連、オフィスサプライまで幅広く、印刷の中でも特殊な領域です。しかも、これらの事業を国内だけでなく、海外でも展開しています。こうした事業の各分野で新たな価値を創造していくためには、従業員一人ひとりが独創的な発想をすることが重要になります。
そのためには、従来のような上意下達ではなく、下の人もどんどん意見を出せて、上の人もそれを認めるという自由闊達な意見交換ができる風土が必要です。そして、こうした風土を育むには、それぞれの従業員が自分の中に軸を持ち、それに基づいて考え、判断し、結果を堂々と述べられる“品格ある大人”になることが求められるのです。