失敗をきっかけに学んだことがいつでも前向きな自分をつくった 河村宣行氏 不二家 代表取締役社長
2020年11月に創業110年を迎える菓子メーカー、不二家。
老舗ではあるが、平均年齢34.9歳という若い力がみなぎる企業だ。
近年は、熊本や北海道などの日本各地や、食品メーカーとのコラボ商品を次々と打ち出し、柔軟性を見せる。
そんな同社の今後の育成の方向性や、河村宣行社長の一皮むけた経験などを聞いた。
あきらめムードを変える秘訣
─社長就任時に、「不二家は洋菓子事業と菓子事業の2つがあることが強みで、シナジーを活かす」とお話ししていました。
河村(宣行氏、以下敬称略)
近年取り組んでいるのは、スーパー内への洋菓子店の出店です。洋菓子店はFCが中心ですが、オーナーさんの高齢化が進み、店舗数は減少しています。それを補うため、スーパーのサービスカウンター横にショーケースを置かせてもらうのです。スーパー内のショーケースなら家賃や人件費がかからず、ロスも少ない。私が社長になった時点でスーパー内の店舗は約250店舗でしたが、これを500店舗まで増やす計画です。
出す店舗は洋菓子店ですが、もともとスーパーと関係が深いのは菓子事業の方です。菓子事業の営業から上げてもらった情報も活用して出店を進め、本年6月には、ついにFC店の減少をスーパー内店舗の出店が上回った。これはシナジー効果でしょう。
それ以外にも積極的な人事交流をしています。以前はまるで別会社のようで、人材が固定化されていました。しかし、それでは様々なしがらみが生まれて新しいことに挑戦しにくい。流動化させて別部門の人を入れた方が思い切ったことができるはずです。
─では、今求めているのは、どのような人材でしょうか。
河村
「物事に前向きに取り組める人」ですね。我が社の洋菓子事業は10数年、マイナスが続いています。頑張っても成果が出ないと、人間はどうしても下を向いてしまう。それは仕方がないことです。私はたまたま菓子事業にいたので、悪いときもいいときも経験させてもらいました。おかげで壁にぶつかっても「なんとかなる」と楽観的に考えられますが、もし洋菓子事業だけのキャリアだったら、下を向きがちだったと思います。
そうしたあきらめムードを変えるには、明るく前向きな人に来てもらうことが一番だと思います。それがきっかけになって成果が出れば、「あの人の言うことを信じよう」という機運が出てきて、下を向いていた人たちも前向きに考えられるようになります。会社としては、そういう人を部門や部署のリーダーにして、孤立させないように支援していくことが大事だと考えています。
逆に、評論家的に物事を見る人はダメですね。たとえば新商品を出すとき、「市場がこういう状況だから売れない」「コロナだから時期が良くない」などと売れない理由から考える人は、周りを暗くしてしまう。条件が悪くても売る必要があるのだから、売れる理由を見つけて突破する情熱的な人が、会社には必要です。
─スキルや能力面では、どのような人材が必要でしょうか。
河村
我が社の洋菓子事業には、簿記の専門学校を出た社員が何人かいます。その社員たちが好成績を上げていると聞いたので、店舗を見に行ったら「今月はこうで、今のところこういう計算になります」と数字の話からしてくれました。これは経営者から見ると心強いですよね。