巻頭インタビュー 私の人材教育論 「知は体で生かせ!」 “現場力”という会社の底力の鍛え方
トラック輸送、鉄道輸送、船舶輸送、物流センター等、物流を中心に幅広く事業展開するセンコー。流通、住宅、ケミカルの各業界向けの物流で抜きん出ているだけではない。「物流」の枠を越え、商流、流通情報といったあらゆる領域でソリューションサービスを提供し続けている。仕事に「枠」を設けず、イノベーションを起こし続ける独自の人材育成について、福田泰久社長に伺った。
物流の枠を超え成長を続ける
――貴社は物流大手ですが、従来の物流企業の枠組みを越える「流通情報企業」や「ムービング・グローバル」という言葉を掲げ、自社の方向性を示しておられます。「物流」という領域を越えていこうというお考えは、どのような歴史に根ざしているのでしょうか。
福田
遡ってみると、当社が何度か変革の舵を切っていることがわかります。最初の変革は社名を「扇興運輸株式会社」から現在の「センコー株式会社」にした時です。「運輸」を取って、さらにカタカナにした。1973年、私が入社4年目の時です。戦前は旧日本窒素コンツェルンに属していましたから、戦後も、そこから誕生した新日本窒素(現JNC)さんや旭化成さん、積水化学工業さん、積水ハウスさんの輸送業務などを引き受けてきました。だが、安定した顧客環境だけに頼っていてはいけない。いろいろな顧客、多彩な業務に挑戦していこうじゃないかと。そこで輸送や工場内作業だけでなく、物流センター業務や各種付帯業務、さらには商流まで含めたサービスや商品を広く提供できる会社をめざそうと考えました。社名変更は、いわばその決意表明のようなものですね。物流センター事業展開、また商流や流通情報などの業務が本格化したのは、1983年頃です。当時、流通系のお客様の物流改革ニーズやご相談が多かったものですから、我々がITやコンピュータを駆使した新しい物流システムやサービスを手掛けるようになっていきました。そこからですね、「流通情報企業」を意識するようになったのは。
――「流通情報企業」とは、どのような企業を指すのでしょうか。
福田
当社では、流通全般にかかわる情報をリアルタイムで収集・分析し、ITを駆使したシステムと融合した流通ソリューションサービスを提供していますが、これが「流通情報企業」です。というのも、当社はメーカーと違って、形となった商品はありません。お客様の販売や製造のお役に立てる、またサポートできるサービスや商品をつくり出し、それを提供することで、商売が成り立っています。ですから、お客様に言われたことだけをするのではなく、我々物流サイドから、お客様の効率化、合理化につながるいろいろなご提案をしなければなりません。
お客様が流通在庫の問題でお困りなら、少ない在庫で販売機会を逃さない商品供給システムを、最適立地の物流センターを使いご提案する。さらにお客様のニーズや流通形態に合わせ、さまざまな付帯サービスも考える。アパレル商品であれば、値札やタグ付けといった流通加工、返品商品のしわ取りや再生なども行う、といった具合です。
――最近は、全国各地に大型の物流センターを開設していますね。
福田
我々は、物流センターというハードに、いろいろなソフトやソリューションを組み合わせ、お客様のベストパートナーをめざしていきたいと考えています。