第13回 リスナーの〝今〟に思いを寄せて 嘘偽りのない態度で誠実に向き合う ピーター・バラカン氏 ラジオDJ
ラジオDJとして、自身が選りすぐった古今東西の音楽の魅力をリスナーへと届けてくれるピーター・バラカンさん。
22歳でイギリスから日本へ、会社員時代を経てDJへ。様々な経験の中でバラカンさんが考えた仕事や人生への向き合い方とは。
また、コロナの時代に音楽ができることについて話を聞いた。
リスナーの“今”に思いを寄せて
――ステイホームの状況下で、ピーター・バラカンさんのラジオ番組が貴重な癒しになっているという人も多いと思います。最近のリスナーの反応はいかがですか。
バラカン氏(以下、敬称略)
僕の番組のリスナーは音楽好き、それもかなり好きな人が多いから、みんなやっぱりライブやコンサートへ行きたいんですよ。生の音楽を味わいたくてしようがない。僕だってそうですから。今の状況に対する不安や不満を番組宛のメールに書いてくる人も少なくありません。それに応えるような感じで、僕も選曲しているんです。
――バラカンさんの母国イギリスを含め、海外でもあいかわらず大変な状況が続いています。
バラカン
アメリカの状況は特に厳しいと思います。その点、日本人はロックダウンを強制されなくても、言われたことに従いますからね。国民性というか……。ただ、マスクをしない人にキレたり、過剰反応が出やすいのは心配です。鴻上尚史さん(劇作家が、日本人は「世間と社会の違い」を認識していないと番組でおっしゃって、なるほどと思いました。確かに世間体は気にするけど、社会的なやり取りは得意じゃない。公の場でキレずに「マスクをしてもらえませんか」と、冷静にコミュニケーションできるといいですね。
秘かな夢を抱いて日本企業に就職
――幼いころからラジオと音楽に夢中だったというバラカンさん。好きなことを仕事にしようと決意したきっかけを教えてください。
バラカン
割と子どもっぽい性格で、人生設計とかちゃんと考えたことがないんですよ。大学のころ、何気なく目を通した老子にまつわる本に「無為自然――人生は川の流れのようだ」という言葉があって、すごくしっくりきました。あれこれ先のことを考えても、そのとおりにいかない。だったら、したいことをできるうちにしようと。考えるのが面倒だっただけかもしれませんが、とにかく音楽が大好きだったので、とりあえず食べていくために、まずレコード店で働き始めたんです。