第1回 危機のいまだからこそ テレワークを再考・深掘りする 鵜澤 慎一郎氏 EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング ピープル・アドバイザリー・サービス リーダー パートナー
いまこそ注目したい組織、人事領域のBuzzword。
第1回目ではあらゆる企業にとって必要不可欠となった「テレワーク」について考えます。
デジタル系Buzzwordが大流行
デジタル人材、HRテック、ピープルアナリティクス、AR / VR 型トレーニング、AI 人事、エンプロイーエクスペリエンス――。デジタルテクノロジーの隆盛にともない、組織・人事領域でもデジタルにまつわる様々なBuzzword を耳にするようになりました。Buzzwordとは特定の分野で一定期間、話題になるものの、定義や意味が曖昧な用語を指します。
「世の中で大きな変化が起こっているな」という感覚を抱いても――これがまさに“バズっている”状況といえますが――、変化に対応するため自社や自分にとってどんな打ち手が必要となるのか、具体的なイメージが描きにくいという人は多いかと思います。そこで本連載ではBuzzword に焦点を当て、用語の意味合いを解説するとともに、コンサルティング事例や先進活用例をもとに、各社の組織開発や人材開発の場面でBuzzwordを生かすヒントを紐解いていきます。
新型コロナウイルス対応にともない、劇的な社会環境の変化が起きています。本稿執筆時の2020年3月現在、日本では大規模なイベントやコンサートが軒並み延期、中止となっています。東京都など外出自粛要請を行う自治体も増えてきました。諸外国ではアメリカ、スペインなどが非常事態宣言をしている他、欧州各国でも感染拡大が止まらず、厳戒態勢が続いています。
かつてない危機的な状況でいま一番バズっているのは、古くて新しいキーワード、「テレワーク」です。読者の皆さんが本誌を手に取られたときには状況が大きく変わっている可能性もありますが、一過性のテーマではなく、普遍的な課題としてこの言葉をとらえるべきでしょう。
日本で働き方改革法案が施行されたのは2019年と最近ですが、2015年に発生した過労自殺問題が社会で大きく取り上げられたこともあり、労働時間の削減や柔軟な働き方を志向する働き方改革の施策が、官民を挙げ、進められてきました。
日本におけるテレワークの取り組みが始まったのは1990年代。しかし、総務省の情報通信白書(令和元年版)「テレワークの導入やその効果に関する調査結果」によると、2019年時点においても企業のテレワーク導入率は国内全体で19.1%、2,000名以上の大企業でも46.6%と定着・浸透しているとはいい難い状況です。
「tele(テレ) = 離れたところ」ではなく、「tel(テレ)=電話」と想起する方も多く、ヘッドセットをしたオペレーターが電話対応をする、といったような時代遅れなイメージもあります。また、英語では“Work fromhome ”や“Working remotely”とよばれるため、外資系企業などではテレワークという和製英語自体が混乱要素になります。しかしながら日本政府や監督官庁が使うので、日本のメディアでは一般的な言葉としてテレワークが多用されています。