Trend 3 起業家養成の権威・バブソン大学で教えられている アントレプレナーシップとリーダーシップ
米国ボストンに、起業家教育に特化した大学がある。
知る人ぞ知る「バブソン大学」である。トヨタの豊田章男社長やイオングループの岡田元也CEOなど、名だたる企業の経営者も卒業生名簿に名を連ねる。
ニューズ&ワールド・レポート誌、大学ランキングの起業家養成部門では20年以上1位を獲得している。世界中から起業したい若者や既に経営に携わる社会人学生等が集まり、学生の4割は海外からの留学生だ。
そこで教えられているリーダーシップとアントレプレナーシップとは。
ボストンでビジネスリーダーに
―最初に、バブソン大学の特徴についてお聞かせください。
ローラグ氏(以下ロ)
通常の大学は、文学部や理工学部などを併設していますが、バブソンはビジネスだけに特化した稀有な大学です。アントレプレナーシップ(起業家精神)、企業経営について集中的に学習でき、リーダーとして不可欠な能力を磨ける環境です。
山川氏(以下山)
主な特徴は2つあります。1つは、何と言っても学生の質と志の高さです。バブソンには世界中から、起業を最高にかっこいいと感じ、高い志と意欲を持つ学生が集まってきます。彼・彼女らは大学側への要求も高いため、教える側の質も自ずと高まります。
2つめは地域柄です。ボストンにはベンチャーキャピタルや投資家等、起業家を支えるための活発なコミュニティがあります。ベンチャーの起業ではシリコンバレーが有名ですが、起業した企業数や投資額という数字で見れば、東海岸もかなりの起業家輩出地域といえます。
なお、バブソンでは企業内起業や同族経営、社会的起業、つまり地域貢献における起業家精神やその実践方法なども、包括的に扱っています。
起業家精神とは何か
―バブソン大学で学べるアントレプレナーシップの内容と、それを学ぶ重要性とは。
ロ
アントレプレナーシップとは、ただ事業を始めるということではありません。「先が分からない状況下でも、まずは“Action”、行動を起こしてみる」というマインドセット(心の持ち方)です。事業のみならず、地域活動や家族とのやりとりなど、人生のあらゆる場面で物事をよりよく、豊かにしていくために重要なものです。
山
バブソン大学では、在学期間中、Problem-driven(課題起点)であることが叩き込まれます。起業の起点や目的は、常に「世の中の課題や問題の解決」のためである、ということです。プラスαでお金をもうけたい、という考えはあってもいい。ただし、あくまでも前提は「世の中の課題を解決すること」というのがバブソンの一貫した考え方です。
世の中の課題や問題を根本的な方法で解決するには、1人で頑張っても限界があります。才能ある人材を集め、チームで課題解決に取り組むことで大きな力になります。そのために、どのようにアイデアとチームをつくり上げていくか。どう“起業家的”に考え行動するかを、実際に起業経験を積み、過程を振り返ることで学んでいきます。