第12回 探究学舎 代表・宝槻泰伸さん “興味”を育てる学習体験 宝槻泰伸氏 探究学舎代表|寺田佳子氏 インストラクショナルデザイナー
人は学べる。いくつになっても、どんな職業でも。
学びによって成長を遂げる人々の軌跡と奇跡を探ります。
今回お話を聞いたのは、宝槻泰伸さん。
多方面から注目を集める学習塾「探究学舎」の代表を務めています。
この塾で子どもたちが身につけるのは、受験対策でも成績でもなく、クリエイティブな“ 熱中”。その秘密に迫りました。
01 高校への疑問と、大学への期待
探究学舎の事務所は、塾というより大人の遊び場のような、ワクワクした空気に満ちている。講師やファシリテーターがパソコンを囲んで喧喧囂囂(けんけんごうごう)アイデアを語り合っているかと思うと、お手製のゲームに興じるグループもあり、はたまた一心不乱に何かを工作をしている人もいる。とにかく誰もが夢中になって「学びの準備」に興じているのである。
それは、ちょうど、
「わぁ!」「すごーい!」
と、子どもたちが感動する声が地鳴りのよう、と言われる教室の空気そのままの熱さなのである。
そんなスタッフたちに声をかけながら、
「ここで、探究メソッドのタネが生みだされているんですよ」
と語るのが、この「変わった塾」の代表、宝槻泰伸さんである。
「講師が語りかけると、子どもたちの顔が輝き、教室が熱狂の渦になる」と言われ、テレビや雑誌にも紹介されて注目されるこの塾は、いったいどのようにして生まれたのだろうか。
三人兄弟の長男として生まれた宝槻さんは、小・中学校では、「成績良し! 素行良し! リーダーシップも十分!」の優等生。なのに「学校をやめる」と言いだしたのは、高校に入って間もないころだった。
「自由がない、生徒の主体性がない、受験勉強ばかりやらされる。こんな青春を過ごしていいのか、と疑問を感じたのです」
とはいえ、せっかく入った進学校である。ここは親が必死に引き止める場面かと思いきや、なんと、宝槻さんの父親はこう言ったのである。
「学校に行くよりクリエイティブなことができるなら、行かなくていい」
しかも、父親の驚くべき言動は、この“鶴のひと声” だけではなかった。翌年、家族全員を引き連れて2カ月間、欧米を巡る旅に出たのである。