第8回 全国通訳案内士・豊嶋 操さん 特別な“旅の道具”を集めて 豊嶋 操氏 全国通訳案内士|寺田佳子氏 インストラクショナルデザイナー
人は学べる。いくつになっても、どんな職業でも。
学びによって成長を遂げる人々の軌跡と奇跡を探ります。
全国通訳案内士の資格をもち、北欧から訪れるゲストたちに日本の観光案内をしている豊嶋操さん。
予想外のハプニングを解決したり、ゲストの難しいリクエストにこたえたり……。
マニュアルどおりにはいかないガイドの仕事を、どのように楽しんでいるのでしょうか。
試行錯誤に満ちた豊嶋さん自身の旅路を、少し案内していただきました。
01 気配りが詰まった“7つ道具”
昼下がりのかっぱ橋道具街。とある刃物屋さんの店先で、トートバッグを抱えて豊嶋さんが待っていた。
「ほんとに外国の方ばかりですねぇ」と私。
「日本の包丁は切れ味が素晴らしいと大人気。料理が好きなゲストをここに案内すると大喜びなんです」と豊嶋さん。
なるほど、英語やフランス語など様々な言葉がとびかう店内では、「どんな包丁をお探しですか?」というスタッフの質問に、「ヤナギバボーチョー!」と躊躇なく答える外国人観光客がいて、こちらの方がビックリである。
豊嶋操さんは、訪日外国人に観光案内や旅行中のサポートをする全国通訳案内士。高い語学力はもちろん、日本の地理や歴史などの幅広い知識を有し、日本の魅力を最大限にアピールするスペシャリストである。
そのスペシャルの秘密は、トートバッグから出てきた。観光ルートをマーカーで記したバイリンガル地図、温泉でタトゥーを隠すための傷パッド、旅館で心付けを渡すときのポチ袋、神社やお寺の手水舎で手と口を清めたときに拭くタオル、お賽銭用の五円玉、などなど……。ゲストに思う存分日本を楽しんでほしいという心意気と気配りが詰まったこの「7つ道具」を持ち、「お呼びとあらば即参上」をモットーとする豊嶋さん。多くのゲストから愛される通訳案内士は、どのようにして生まれたのだろうか。
02 英語にどっぷり浸かりたい!
豊嶋さんは、江戸時代から続く薬屋の家系に生まれた。薬剤師の免許を取って家を継ぐ。幼いころからなんとなく、そうなってほしいという周りの期待をひしひしと感じていた。
しかし、小学生の豊嶋さんが夢中になったのは、TV 番組『兼高かおる世界の旅』。毎週日曜日の朝、テレビにかじりつき、可憐な日本人女性ジャーナリストが世界を旅する美しい映像に目を輝かせて見入った。
「いいなぁ、自由自在に英語がしゃべれて、いろいろな国の人に会えて……」