CASE4 小金井精機製作所|ベトナム人の若手技術者を継続採用 “みな仲間である”という意識が多様性への当事者意識を生む 大坂修二氏 小金井精機製作所 取締役 品質管理部 部長
従業員数約300名の同社では、うち43名がベトナム人の技術者だ。
第一期生を受け入れた2007年から13年継続して受け入れを続け、2020年にも新たに3名を採用した。
しかし、当初はコミュニケーションや文化の違いに、戸惑った面もあったという。
彼らを受け入れる風土はいかに醸成されたのか。
また、組織や社員にはどのような影響があったのか、話を聞いた。
優秀な人材確保のために広く海外に門戸を開く
小金井精機製作所は、1943年に小型機械の部品加工メーカーとして創立、現在は次世代電動自動車やオートバイ、航空機ジェットエンジン部品など、精密機械加工分野の第一線で幅広く事業活動を行っている企業だ。特に注目を集めているのが、F1などで使用されるレーシングマシンのエンジンの製作技術で、世界でも非常に高い評価を得ている。
同社では、毎年継続してベトナムの大学から新卒学生を採用しており、今では合計で43人(本社狭山台工場19人、前橋工場15人、ベトナム法人9人)のベトナム人が正社員として勤務している。
外国人社員採用の歴史は2001年にさかのぼる。取引先からの紹介もあり、現地を訪問してインド人の大学卒業生4人を採用したのが始まりだった。
「やはり優秀な技術者を確保したかったというのが、外国人採用をスタートさせた1つの大きな理由です。
それに加えて、当時当社の役員だった現会長(鴨下礼二郎氏)の、いろいろな国の人材にもっと門戸を広げていこうという考え方も影響していたと思います。鴨下は、若いころドイツに1年間留学していたことがあり、自分自身が差別を受けて苦しんだ経験も踏まえ、『外国から来た人も国籍は関係なくみな同じ社員であり仲間である』という姿勢を当初から明確に打ち出していました」(総務部長の江川淳一氏)
ただ、最初に入社したインド人たちの大半は、キャリアアップのための1つのステップとしてしか同社をとらえていなかったため、なかなか定着せず、最終的に2005年には全員が退職した。
そんななかで、ベトナムの大学から優秀な学生がいると紹介を受け、役員が実際に学生たちと現地で面談をする機会をもったのが2007年だった。
「実際に会ってみると本当に優秀な学生がそろっていることがわかり、これなら正社員での採用を進めていこうということになったのです。今でこそ『ダイバーシティ』といわれますが、当時はダイバーシティという言葉自体もそれほど使われてはいませんでした。ですから、多様な人材を生かそうというより、どちらかというと優秀なベトナム人を採用することで、会社の生産性を上げたいというのが、大きな狙いでした」(取締役品質管理部部長の大坂修二氏)
言葉が通じず3カ月間の日本語教育を実施
結果的に、2007年には8人のベトナムの大学卒業生を技術者として採用した。だが、もちろんいきなりスムーズにはいかなかったという。