企業事例① 日本郵船 経験学習と適切なフィードバックが強いベテランの土台になる
海上運送業で120年を越える歴史のある日本郵船。海上を行く船さながら、社内には風通しの良い、明るい雰囲気が漂う。それは「全員を将来の幹部候補」と捉えられた社員たちが、ジョブローテーション、Off -JT、そして育成的フィードバックでしっかりと若い頃から鍛えられ、生き生きと働いているからであった
1,600名が5万4,000名のコアメンバー
日本郵船グループは、1885年の創業以来、海運業だけでなく、現在では海、陸、空にまたがる総合物流企業グループとして、世界中で事業を展開している。世界各国に関連企業があり、グループ全体の従業員数は約5万4,000名。このうち約1,600名が日本郵船の社員である。
約1,600名の社員のうち約600名は、船に乗り込んで働く航海士や機関士などの海上職。残り約1,000名が、陸上で働く陸上職と呼ばれる。
30代後半から40代前半の社員に対して、求めることは何だろうか。総務CSR本部人事グループ経営委員グループ長の吉田芳之氏は次のように語る。
「日本郵船グループでは会社の構造上、日本郵船の社員1,600名がコアとなり、全グループ5万4,000名の社員とともに事業を展開しています。つまり、社員全員が将来の幹部候補なのです」
日本郵船の社員は、同社の英語表記にちなんで、「K等級」「Y等級」「N等級」に区分されている。新卒社員はK3になり、順次K2、K1、そしてY2……と等級が上がる。3段階のK等級を終えるのに、およそ10年。Y2は5年、Y1は7年が目安だという。
今回の特集テーマである30代後半から40代前半の社員とは、同社ではY2からY1の社員に当たる。Y1はいわゆる課長職(チーム長)であり、Y2社員はその下。Y等級の社員は、海外のグループ会社のマネジメントも含めて、さまざまな重要な仕事を担う。そのため、同社ではY1以前までに、誰もがどんな職場でも管理職を担うことができるよう、育成を行っている。
全グループ5万4,000名のコアメンバーだけあり、この年代の社員は働き盛り。同社ではポスト不足やそれに伴うモチベーション低下等の問題は見られないという。
「Y等級はいわゆる課長職。一番働いてもらう時期です。現場のことは実質チーム長が決めているわけで、権限もある。一番仕事をわかっていて、現場の最前線でバリバリと働いてもらわないといけません。
この時期は、『会社を動かしている』という感覚が出てくる頃ですよね。自身の考えが直接会社の動きに反映されるようになり、仕事は大変だが面白い。モチベーションをダウンさせている暇がないのが実情です」(吉田氏、以下同)
ローテーションによる機会提供が社員を伸ばす
日本郵船では社員に求める資質について、以下の3つを挙げている。