CASE2 楽天|「社内公用語英語化」が自分ごと化を進めた 大切なのは「なぜ必要なのか」の共有 イノベーションの源泉としてのダイバーシティ 黒田真二氏 楽天 グループ人事部 ジェネラルマネージャー 他
イノベーション創出のため、「ダイバーシティ」の取り組みを企業戦略の柱に位置づける楽天。
特に外国籍人材については、70を超える国と地域籍の社員が在籍し、その比率は全体の2割強を占める。
2010年より社内における公用語英語化を進め、世界基準のダイバーシティの環境づくりを進めてきた同社。
改革を後押ししたものは何だったのか、話を聞いた。
人とアイデアが行き交う企業文化
「同じ釜の飯を食う」―この少々古めかしい日本語に、70を超える国と地域からの人材を擁する“ダイバーシティ先進企業”楽天の原点が、実は象徴されている。
東京・二子玉川にある楽天本社の社員食堂は、ランチ時ともなれば、様々な国籍のスタッフで2カ所計1,500席が見る見る埋まっていく(右ページ画像)。ダイバーシティを絵にかいたような盛況ぶりだ。インドベジタリアンやハラルまで対応するメニューの幅広さも、国際色豊かな組織ならでは。それが基本、雇用形態を問わず全スタッフが無料で食べられる。同社では、ランチだけでなく、朝・昼・夕の3食を提供し、従業員の健康維持と社内コミュニケーション活性化を図っているのだ。
「“みんなで同じ釜の飯を食べて、家族のような一体感を”との三木谷(浩史社長)の発案で品川シーサイドのオフィス移転を機に始まった施策ですが、その考え自体は新しいものではありません」と、同社グループ人事部ジェネラルマネージャーの黒田真二氏はそう切り出した。
「経営者の考え方から、従業員の基本的な福利厚生などに原則差をつけないという考え方が根付いています。創業時、ダイバーシティという言葉こそ使っていなかったものの、性別、年齢、国籍といった個々人の属性やバックグラウンドにとらわれない。そういう発想から、楽天という企業は始まっています」(黒田氏)
そもそも「同じ釜の飯を食べる」「基本的な福利厚生などに原則差をつけない」といった発想が出ること自体、経営が「社内に多様な人材がいる状態」をマネジメントの大前提、所与の条件として受け入れているからに他ならない。実際、楽天グループは、ダイバーシティへの取り組みを企業戦略の柱と位置づけている。多様な人とアイデアがオープンに行き交う企業文化こそが、同社の競争力の源泉をなすからだ。黒田氏が続ける。
「当社は『イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする』ことをミッションとしています。常識や既成概念の枠にとらわれない革新的なビジネスを次々と生み出し、グローバルマーケットで成功するためには、いいアイデアをオープンにどんどん取り入れていかなければいけない。性別や働き方、国籍などの違いが、それを妨げる壁であってはならないのです。社員の多様性を尊重し、一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境づくりを推進することで、世界各国の優秀な人材が楽天グループに集まるようになってきました」(黒田氏)
アイデアを重んじるがゆえのダイバーシティ推進―。それはイノベーションの創出を使命として立ち上げられた同社にとって、まさに必然の選択といえるだろう。
「社内公用語の英語化」が転機
創業は1997年。三木谷社長含む6人のメンバーとサーバー1台で、インターネットショッピングモール「楽天市場」を立ち上げたのがはじまりだ。
違いにとらわれず、むしろ異なる人材を積極的に歓迎する文化自体はスタートアップのころからあったが、会社としてのステージが進化するにつれて、ダイバーシティの在り方や狙いも変わってきたと、黒田氏は振り返る。