CASE1 アクサ生命保険|自ら発信する企業文化の浸透 多様な人材が当たり前に混ざり “主体的”に個性を活かす 遠藤早苗氏 アクサ生命保険 人事部門 タレントCOE 部長 他
保険大手のアクサ生命保険では、「事業実現のためのダイバーシティ&インクルージョン」と銘打10年かけて従業員主導の体制をつくり上げてきた。
鍵は、一人ひとりが安心して「自らについて発信しよう」と思える文化・風土の醸成だ。
いかにそのような風土はつくられたのか、担当者に話を聞いた。
“属性で分断しない”考え方を徹底
「私たちは、ダイバーシティ&インクルージョンを醸成します。異なる考え方や多様な経歴/経験は、長期的な成功には欠かせないと確信しているからです」―。これはアクサ生命保険が掲げる12のコミットメントのうちのひとつ、ダイバーシティに関する項目である(図1)。
同社がダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を重要な方針に据えるのには、理由がある。人事部門タレントCOE カルチャー&ダイバーシティマネージャーの今津知子氏は次のように説明する。
「アクサは、世界57の国と地域で保険・資産運用ビジネスを展開しており、多様な国々の多様なお客さまのニーズにより良くお応えするために、社員の多様性を重視しています。また、アクサのビジネスは、お客さまが自信をもって人生をお送りいただけるように寄り添い、エールを送ることです。単に保険金を支払うペイヤーではなく、パートナーとしての関係を目指しており、社員一人ひとりに、個別のお客さまに対応できる柔軟性や、幅広いニーズにお応えするアイデアが求められます。そのためには、多様性、つまりダイバーシティ&インクルージョンが必須なのです」
本格的なダイバーシティ&インクルージョンに着手したのは2009年のこと。特にアクサとしてのダイバーシティの考え方や哲学が反映されているのが、障害者の雇用である。
「当時、経営陣は、“属性で分断しない”ということを優先し、あえて障害者雇用のための特例子会社を設けない選択をしました。つまり、障害のない人とその他の人が一緒に仕事を進めていくことを原則としたということです。この方針は、今も変わっていません」(今津氏)
人事には、障害者雇用に関する知識が豊富な障害者採用専任のスタッフを配置。入社希望者の得意分野や就業上の配慮事項、過去の就業経験などを踏まえて、採用部門のニーズとのマッチングを行う。また、障害者の社員を迎えるのが初めての採用部門には、別途研修を行って、入社準備をしてもらう。
このようにフォローを行うが、採用の最終的な判断や入社後の育成責任を担うのは、あくまでも各部門である。
「専任のスタッフは採用とその後のサポーターであり、採用責任、育成責任は部門にあります。障害者の採用であっても、基本は一般の採用となんら変わらないということです。一緒に働きたいと思った部門が、責任をもって社員を採用し、大切にし、活躍できる環境を整えるというのは、アクサの一貫したポリシーです」(今津氏)
現在の障害者の雇用率は2.41%と法定雇用率を上回る水準だ。社内のどのフロアでも、障害者と健常者がともに働く光景が違和感なく浸透しているという。