企業事例 国分 「3年間は基礎固め」 地域の現場で育てる 老舗卸売業の新入社員教育
2012年に創業300年を迎える国分は、食品や酒類の老舗卸売業。
メーカー ・ 小売それぞれのニーズをつなぐ主体は“人”だとして、人材育成に注力している。
新入社員の育成についても、「会社全体で育成し、じっくり基礎固めをする」という方針の下、1 年以上の研修期間を設けていたが、2010年度より新たに3年間の新入社員育成プログラムを開発・実施しているという。
同社の新入社員に対する取り組みを紹介する。
信用をもとに人と人をつなぐ卸売業
2012年に創業300年を迎える老舗の食品類の卸売業、国分は、毎年30名から40名の新卒入社社員を採用し、1 年以上かけた新入社員育成プログラムを2007年度より実施してきた。即戦力を求める近年の新卒採用の傾向の中で、1 年間という期間は十分に長期だといえるにもかかわらず、本年2010年度よりその期間をさらに2 年伸ばし、約3年にしたという。同社が考える若手人材育成のあり方について、人事総務部長の小木曽泰治氏、人事総務部チームリーダーの梅澤篤氏に話を聞いた。「
まず大前提として、卸売業である当社では、人材を最大の資産だと考えているということがあります。卸というのは、メーカーのように自社商品を持っているわけでも、小売のように、直接エンドユーザーとやり取りをするわけでもない。流通の担い手としてその両者を橋渡しする役目です。よって、仕事の基本となるのは“信用”。人と人とのやり取りの中で、気配りやマナーを大切にするといったことが最も重要になってきます。そのため、信頼関係を形成する“人”は最も投資すべき経営資源であると考えており、育成に力を注いでいるのです」(小木曽氏)
同社では、全社員に対してOJT とOff-JT、自己啓発支援を組み合わせた教育体系を用意。各階層別のマネジメント研修に加え、自己の行動変容や自分を見つめ直す研修など、さまざまな機会を設けている。「教育だけではなく、社員間、または社員―役員間のコミュニケーションを活性化する“ジェネレーション会”も定期的に設けています。同年代の社員10~15名と役員が2 時間ほど意見交換の時間を持ち、その後、懇親会でコミュニケーションをより深める機会です。役員との直接対話によって、社員のモチベーションアップや、社員からの意見の吸い上げが可能になり、組織活性化にも貢献しています」(梅澤氏)
ただしこのジェネレーション会、かつては各世代で実施していたが、現在は20 代については実施していないという。その理由の1 つに、新入社員や若手については、役員層との意見交換よりも、基礎の習得にじっくり時間を割くべきだとの考えがある。この点が今回の新入社員育成プログラムの見直しにもつながっているというのだ。それでは新入社員のうちに身につけるべき「基礎」とはどのようなものなのか。
「卸売業としての信用を得られるようになることにつきます。まずは、売掛金・買掛金といった卸特有の経理知識、またたとえば細やかな気配り、コミュニケーション能力などが重要な基礎力ですね。当社の扱う商品数は約60万、取り引きのあるメーカーは9700社に上り、得意先も百貨店やスーパー、レストランまで幅広い。その中で仕事をしていくためには、専門的な知識だけではなく、上記のような基礎と卸の業務の全体像を把握していることが重要です。これらを新入社員のうちにしっかりと習得してもらうことを求め、育成を行っています」(小木曽氏)
実践の中で磨かれる卸売業の基礎力
新入社員育成プログラムの内容を具体的に見てみたい。約3 年かけて育成するプログラムは、導入研修と、それぞれ1 年ずつエリア支社で行われる経理・営業内勤・営業補佐の業務研修で構成される(図表)。