CASE7 パーソル ホールディングス 高度なデータ分析だけが「HRテック」ではない 個に寄り添い現場人事をサポートデータ活用で “社内コンサルタント”を担う 山崎涼子氏 藤澤 優氏 パーソル ホールディングスグループ 人事本部 人事企画部 タレントマネジメント室
「Advanced HR showcase(先進人事のショーケース)」を人事ポリシーに掲げるパーソルホールディングス。
機械学習手法を用いた社員のリテンション予測モデルなどを構築し、社外からも高く評価されてきたが、現在は方向性を転換したという。
データ活用の在り方や人事施策について、話を聞いた。
高度な技術を駆使するものの試行錯誤していた時期
パーソルホールディングスが人事施策へのデータ活用を開始したのは、2015年にさかのぼる。
「当社の人事は以前からペーパーレス化が進んでいて、結果的に人事関連のデータがたまっていました。人事役員などと対話をするなかで、『これらのデータを、マーケティングと同じように、人事の意思決定に活かせるのでは』という仮説をもったのが、人事におけるデータ活用のきっかけです」
こう語るのは、グループ人事本部人事企画部タレントマネジメント室室長の山崎涼子氏。山崎氏とデータ分析の知識をもつメンバーの2人体制で、現在の組織の前身である人事情報グループにおいてデータ活用プロジェクトがスタートした。
初めに取り組んだのは、社員のリテンションを予測するしくみ。基幹システム内に蓄積された、社員の属性や人事考課等の人事データを用い、機械学習手法により社員の退職可能性を予測する予測モデルを構築した。
次に行ったのは、異動後に活躍できる可能性の予測だ。たとえばA さんをB 部署に異動させたい場合、まず、Aさんが異動すること自体によってパフォーマンスが上がる可能性を予測する。その一方で、B 部署で活躍している人のコンピテンシーとAさんの特徴との類似度を測り、これらを組み合わせて、A さんをB 部署に異動させたときに活躍できるかを見極める。
同社が生み出したこれらの予測モデルは、「HRテクノロジー大賞」のアナリティクス部門優秀賞を受賞し、社外からも高く評価された。ところが、これらが実際に同社で役立っているかというと、予想したほどの効果は上がらなかったという。
「リテンションの予測については、退職しそうな人を検知したところで、その人がなぜ辞めたいかがわからないと手の打ちようがありません。それだったら、そもそも自社ではどんな理由で辞める人が多いのか。給与に不満があるのか、キャリアアップのためか、上司との関係か、カルチャーに合わないのかといった退職の要因を分析した方が、リテンション策につなげやすいのです。それから、異動後の活躍モデルについても、人事担当者の勘と経験頼みの配置よりは良い配置ができそうですが、そこには、たとえば上司と部下の相性などの情報は入っていない。異動後の活躍にはいろいろな因子が影響するので、一側面から見たデータでは決められないのです」(山崎氏)