CASE4 リコージャパン 人事こそ実験をしよう 科学的人事とHRテクノロジーを活用して ESとCSの徹底的な追求を目指す 山田裕治氏 高須彰一氏 リコージャパン
リコーグループの国内販売会社であるリコージャパンでは、
近年積極的に科学的人事やHR テクノロジーの活用に取り組んでいる。
最新の活用事例や今後の展望について聞いた。
「科学的人事」と「HRテクノロジー」導入の背景
リコージャパンでは、2018年から積極的にHRテクノロジーを導入・活用している。また、様々な人事データの統計学的な分析、活用を「科学的人事」と名づけ、HR テクノロジーの導入以前から、人事分野におけるデータ活用を進めてきた。
「背景にあるのは、リコージャパンの経営の軸であるES とCS の徹底的な追求です。社員が生き生きと誇りをもって働き、お客様から感謝される顧客価値企業を目指して、2017年から働き方改革を進めてきました。科学的人事やHR テクノロジーはそれを実現するための手法です」
そう話すのは、常務執行役員人財本部本部長の山田裕治氏である。
ES とCS の徹底的な追求にあたっては、社長自ら全国各地に赴いて社員とダイレクトコミュニケーションを行ったという。そこで明らかになった生産性や人事制度などの課題に対して、2017年から広義の働き方改革に着手。全国399の営業所、426のサービスステーションで働く1万8,000人以上の社員を対象に、生産性を向上させるための業務プロセス改革や、多様な人財の活躍を促す人事制度改革などに取り組んできた。
「人事に求められることは、社員のモチベーションやエンゲージメントを高めること、そして個の特性や能力が活かせる場を提供することです。しかし、これだけの人数の個別最適を、人事担当者の勘と経験による属人的な判断で実現することは難しいでしょう。1万8,000人のモチベーションやエンゲージメントの状況を適時適切に把握し、能力を活かすベストな場を提供し、経営戦略と個別最適を同時に実現するには、科学的人事やHR テクノロジーの活用が不可欠なのです」(山田氏)
「デジタル」と「アナログ」双方を重視
ダイレクトコミュニケーションに象徴されるように、同社ではアナログHR(肌感での現場情報把握)とデジタルHRを組み合わせて活用している(図1)。
「アナログHR と科学的人事やHRテクノロジーを効果的に組み合わせることで、経営戦略と個別最適の同時実現が加速できると考えています。社員とあまり話さず、現場がわかっていない経営陣にES 調査の結果データだけを見せても際限のない分析で終わるでしょうが、ダイレクトコミュニケーションで現場の実態把握ができていれば、認識共有も改善策の検討もすぐにできるからです。また、ダイレクトコミュニケーションは人数や回数に限界があるので、そこで取りこぼしている課題をES 調査で補うことも可能です。科学の力は活用しますが、社員と向き合うアナログも重視しているのが弊社の取り組みの特徴です」(山田氏)
同社では、個人や組織の状態の見える化と施策効果の確認、個々の特性や価値観に適合する仕事環境や成長環境の整備に、科学的人事やHRテクノロジーを活用している。最新の活用事例を紹介したい。
科学的人事の活用事例
科学的人事の目的は、各種データの統計的分析を行い、論理的・客観的な結論を導き出すこと。主に以下の分野で活用している。