第8回 社員一人ひとりが主体的に仕事を生み出し 多様に活躍できる組織づくり 安森 一惠氏 株式会社クレディセゾン 戦略人事部 部長
1980年代から続く女性社員の積極採用や2017年の全員正社員化など、時代の先を読む人事施策で話題を集めるクレディセゾン。
今年、戦略人事部トップ、そして同社歴代2人目の女性取締役に就任したのは、事業部出身の安森一惠氏である。
安森氏の軌跡をたどると、人事を託された理由が浮かび上がってきた。
1人でやりきる現場に惹かれた
クレジット大手のクレディセゾンでは、今年3月から人事のトップが変わった。新たに戦略人事部長に就任したのは、入社25年目の安森一惠氏である。安森氏はこれまでバックオフィスとは無縁のキャリアを築いてきたため、人事部トップへの就任は予想外だったという。
「人事とのつながりといえば、採用や研修などに協力するくらいでしたので、驚きました。正直、どうして自分が人事にいるのか、今でも不思議に思っているくらいです」
だが、安森氏と話しているとその登用は不思議なことではないとわかる。「なぜ、これを行うのか」、一つひとつの仕事の本質に向き合い、合理性を追求する。現場に足を運び、部下と話し合い、腹落ちするまで実態を探る。とにかく物事への向き合い方や、その本気度が半端ではないのだ。
もともと金融業界を志望していたわけではないが、一生働き続けたいと思っていた安森氏にとって「女性が働きやすい会社」というのに魅力を感じ、1994年に入社した。
最初の配属は、自ら志望したセキュリティ部門のコールセンターだった。同期の多くは系列デパートなどのカウンターに配属され、営業のいろはを叩き込まれるなか、加盟店からの問い合わせや会員からのクレームなどトラブル対応に明け暮れた。
「なぜかその仕事に惹かれたんですよね。特に夜間は上司もいないので、自分で判断して1人で完結させるような環境が、かっこいいと感じたのかもしれません。配属前に研修で各部署を回ったのですが、コールセンター研修の日だけは日誌も異様に細かく記録していたのを覚えています」
有期雇用のスタッフが多数を占めるなかで、自然とマネジメントの基本を身につけた。正社員の後輩がなかなか配属されず、いつも新人の指導を任されていたのは安森氏だったからだ。そして先輩からある仕事を引き継ぐことになる。100人以上いるオペレーターのシフト作成だった。
「データ室にこもりきりで、今となっては考えられないくらいアナログの仕事でした。カウンターのあるデパートなどでセールがあれば、着電数が多くなるのでオペレーターをたくさん配置しなければなりませんが、当時は、各店のセール日程を知るにもチラシを取り寄せなければならなくて。前年の情報もほとんど蓄積されておらず、電卓を叩きながら必要な人員をはじき出していました。『これ、人がやるべき仕事なんだろうか……』と心の底から思いましたね」
長く受け継がれている方法が、その時の最適とは限らない。もっといい方法があるはずだと、展示会の会場でコールセンター用の入電予測システムのパンフレットを集めて上司に必要性を訴え、導入を実現させた。