人材教育最前線 プロフェッショナル編 職業人生の幅を広げる山や川を意図的につくるのが人事の仕事
試薬や化成品、臨床検査薬のメーカーとして、高い技術力で信頼を築いてきた和光純薬工業。こうした確実に安全性を確保しなければならない製品を扱う組織では、どうしても保守的な風土が醸成されやすいといえる。同社の総務人事部課長の山根聡氏は、社員の挑戦する意欲を引き出すために、平坦な道にあえて障害物を置くことも人事部門の役割だと説く。30年近い経験を持つ人事部門の専門家として、自分で考え、自分で行動できる社員が育つ環境づくりに情熱を注いでいる。
人事関連業務一筋30年専門知識の豊富さが自信に
企業の、人事部門への異動のケースとして、事業部門で現場を経験した後に人事部門に配属される人も少なくない。しかし、化学薬品のメーカーという業種柄、高度な専門知識を必要とする現場と管理部門との間を異動することが難しいため、和光純薬では、管理部門の人員が現場経験を積む機会はほとんどない。山根氏も、1984年の入社以来約30年間、一貫して人事畑を歩んできた。
その点について山根氏は、「不安はなく、むしろ人事一筋の経歴が自分の強みになっている」と語る。
というのも、他社では経験できないくらい人事関連の業務を幅広く経験でき、「人事に関してはある程度わかる」といえる自信があるからだ。
新人時代には、採用の窓口業務を担当、その後、東京の事業所に異動(1986年~)してからは、求人から採用試験まで、東日本地区の採用関連業務全てを担当した。それと並行して、給与関連や社会保険等の業務も遂行していた。
本社に戻り1993年頃からは、人事制度や教育関連業務も経験した。さらに2000年から1年余り、情報システム部門で商品情報の管理を経験し、これも、その後の人事情報システムを構築するための知識として役立っている。
効果的な人事施策は、配属や評価、教育など、さまざまな要素が連動している。それを構築するには、関係する全ての要素を熟知した人材が欠かせない。山根氏は、まさにその代表といえる。「業務を通じて培った知識や経験は、仕事を進めるうえで大きな財産になっています」(山根氏、以下同)