働き方改革2 褒めの文化と挑戦する風土 一人ひとりの才能を開花させろ! 「強みを活かす」育て方
チャレンジングな事業展開やユニークな人事制度で、
注目を集めるサイバーエージェント。人事部門トップの曽山哲人氏は、
機動力のある組織づくりに「強みを活かす」ことは不可欠であり、
それが、働き方改革にもつながると説く。その真意とは。
個性を磨いて変化に挑む
―「働き方改革」というと、残業削減や休暇取得促進といった、労働時間の短縮に注目しがちです。しかし曽山さんは、いろんな場で「強みを活かすことが働き方改革につながる」と述べられています。なぜでしょうか。
曽山哲人氏(以下曽山)
会社と個人が共にハッピーになることこそ、働き方改革の大前提です。そのうえで、理由としては次の2つが挙げられます。
1つは、生産性が向上するからです。「やる気が出ている人」と「やる気が出ていない人」を比べたら、当然ながら、前者のほうが確実に生産性は高いはず。そして、やる気が出ている人の出現率は、「弱みを潰す風土」よりも「強みを活かす風土」のほうが断然高いでしょう。
2つめは、産業構造の変化により、知的労働のウエートが高まっているため。製造業現場にもAI 、IoTが導入されるなど、分野に限らず知的なサービスが必要とされる時代です。企業は変化を察知し、自社の競争優位性を理解したうえで競争力のあるサービスを世に送り出さなければ、勝ち続けられません。それには、従来の「弱みを潰すマネジメント」を見直し、「強みを活かし、個々の才能が化ける環境」をつくる必要があります。
―変化への対応力に優れた組織であるには、「強みを活かす」風土が必要だということですね。
曽山
そうです。企業は人の集団です。経営陣はもちろん、集団の中にいる人たちが変化に慣れている状態をつくっておくほうがいい。言うことをきく若者だけを育てていては、20 年後、会社がどうなるかは目に見えています。
人間、変わることは誰しも怖いものですが、強みがあれば、「何とかなる」と、変化に挑むこともできる。また、強みを自分の競争優位性と認識することで、自信が生まれ、仕事を頑張れるようにもなります。
なお、ここで言う強みとは、「個性」と言い換えることもできます。英語が話せる、会計ができるといったスキルとは別のものです。
―いつ頃から強みを活かすことに着目するようになったのですか。
曽山
2005 年、人事部門のトップに就いた時、社長の藤田(晋氏)や役員たちと、「個々の強みを伸ばさないと、会社自体が伸びないよね」という話をしたことがありまして。ちょうど急成長を続け、社員がどんどん増えている時でした。
個人的な発見もありました。経営陣をよく見てみると、誰一人完璧な人間はおらず、みんなそれぞれ弱みを持っていることに気づいたのです。他社のトップの方々にもお会いする機会がありましたが、タイプはいろいろで、「こういう人が社長になる」というパターンはないと知りました。しかし社内外を問わず、あらゆるリーダーには1つだけ共通していることがありました。「強みを発揮している」という点です。
いろんな人がリーダーになる可能性を秘めているというのは、うれしい発見でした。それまで“社長”というと、スーパーマンしかなれないと思っていたものですから。また、全員が平均点のつまらない集団ではなく、強みもあるけど弱みもある、しかし強みを互いに支え合える集団であれば、大きな成果が出るに違いない、とも思いました。
褒め合う組織は笑顔が溢れる
―「強みを活かす」組織になるために、必要なことは何でしょう。
曽山
まず、「褒めること」を大切にしています。強みに光を当て、認めてあげることで、人は勇気を持てるもの。特に若い世代は日頃からSNSに馴染んでおり、フォロワーや「いいね!」といった共感の連鎖が起こりやすい環境で過ごしています。承認欲求が顕在化した世代といえるでしょう。だから、承認してくれる上司、つまり褒める上司の存在は、若い社員にとって大きなエネルギーになります。
褒める上司は、直属の部下だけでなく、組織全体をポジティブにします。逆のタイプだと、今時、LINEであっという間に噂が広がったりしますが(笑)。
同僚同士、褒め合うことも大切です。褒め合う組織には、共感や応援、連携が生まれます。お互いのダメなところばかり見る組織より、確実に笑顔は多くなるでしょう。