第8回 大企業の若手有志がつながるONE JAPAN(前編) 若手社員が抱える悩みとは ONE JAPAN I中原 淳氏 立教大学 経営学部教授
日本を代表する大企業50社の若手・中堅の有志団体をつなぐ活動が注目されている「ONEJAPAN」。
部署や企業の垣根を越えたチームを主体的につくり出す原動力はどこにあったのでしょうか。
大企業の閉塞感を打破したい
「意思決定のスピードが遅い」「変化に対応できない」「イノベーションが生まれない」――。日本の大企業の多くが、変革の必要性を痛感しながらも「変われない」悩みを抱えています。一方、そこで働く若手社員たちもまた、「やらされ仕事ばかりでやりがいのもてる仕事ができない」「新しいことに取り組みたいが、一緒にできる人が社内にいない」と行き詰まりを感じています。
そんななか「大企業の若手社員が交流し、つながり合う場をつくることで、こうした閉塞感を打ち破りたい」という思いから2016年9月、パナソニックの若手有志団体「OnePanasonic」の代表だった濱松誠氏を中心に富士ゼロックス、NTTグループ、トヨタなど、日本を代表する大企業26社の若手有志団体をつなぐコミュニティー「ONE JAPAN」が結成されました。
現在、ONE JAPANには、約50社の有志団体が参加。業種、業態の異なる様々な企業の若手・中堅社員が集まり、組織の活性化や共創を生み出すコミュニティーづくりを目指しています。情報交換や勉強会、企業の垣根を越えた交流イベントなどが行われており、共同で新規事業発案を行うといった成果も生まれています。共同発起人・共同代表である濱松誠氏と、有志団体の代表者メンバーであるトヨタ自動車の土井雄介氏、野村総合研究所の瀬戸島敏宏氏に話を聞きました。
ネットワークを生かし、新しいサービスや商品の実現を目指す
中原:
ONE JAPANは、大企業の若手有志団体のコミュニティーということですが、どのようにして結成されたのでしょうか。
濱松:
そもそものきっかけは2012年3月、パナソニックの若手社員を会社横断的につなぐため、私が仲間と結成した若手有志団体「One Panasonic」です。キックオフイベントには大坪文雄社長(当時)も駆けつけ、以後、若手だけでなく、経営層や管理職も巻き込んだ交流イベントやハッカソンを開催し、社内の縦・横・斜めの関係づくりを進める取り組みを続けてきました。
こうしたOne Panasonic の活動が社外からも注目され、他の大手企業でも若手有志団体が結成されるようになり、「各社の有志団体が横につながれる場をつくろう」ということで2016年9月、富士ゼロックスの「秘密結社わるだ組」の代表、大川陽介さん、NTTグループの「O-DEN」代表、山本将裕さんと共に、26の会社の有志団体が集まるコミュニティーとして立ち上げたのがONE JAPAN です。
中原:
どんな活動を目指しているのでしょうか。
濱松:
目指しているのは、共創による価値づくり、人・土壌づくり、意識調査・提言による空気づくりです。価値づくりでは、大手企業の若手・中堅社員のネットワークを生かして、新たなサービスや商品の実現を目指す分科会を立ち上げています。三越伊勢丹が昨年リリースした衣料品シェアリングサービス「CARITE」がその一例です。「意識調査」に関しては、NHKのディレクター、神原一光さんを中心として、1,600人の若手社員を対象とした兼業・副業や子育てについての「働き方意識調査」を行い、調査結果を提言につなげることができました。
中原:
ONE JAPANという組織自体はどのように運営しているのですか。