Special Column ~ユニークAI 誕生秘話~ チームの闊達な風土が生んだ 横浜市「イーオのごみ分別案内」
燃やすごみ、燃えないごみ、プラスチック、粗大ごみ……
「これ、何ごみだろう?」と分別に迷った時に教えてくれるチャットボット「イーオのごみ分別案内」。
これは横浜市と民間企業が共同で開発し、実証実験を行ったものだ。
このチャットボットではAIがどのような役割を果たしているのか、またこのような遊び心のあるサービスが誕生した背景には、どのような組織風土があったのだろうか。
民間事業者と連携して開発
横浜市資源循環局のHPにアクセスすると、マイバッグをモチーフにしたキャラクター「イーオ」が画面右下に登場する。イーオをクリックするとチャットボットの会話画面が開き、捨てたいごみの名称を入れると捨て方を教えてくれる。
横浜市はこれまでにもごみの分別率向上に取り組んでおり、イーオがリリースされる前は分別検索システム「MIctionary」や、遊びながら分別方法が学べる「分別ゲーム」などが使われていた。既存のサービスがあるにも関わらず、イーオの開発に取り組んだ背景には、どんな問題意識があったのだろうか。横浜市資源循環局政策調整部3R 推進課長の江口洋人氏は次のように話す。
「『燃やすごみ』として出されるごみの中に、本来分別をしなければならないプラスチック製容器包装や古紙などが約15%含まれているという現状がありました。横浜市では、集積場所に出されたごみでも、分別されていないものや回収日が違うものは収集できません。その場にごみが残ってしまうわけで、それが地域の困りごとになっていました。そこで分別率を上げる、さらなる取り組みを行う必要性を感じていました」
そんな矢先、市が民間事業者から公民連携に関する提案を受け付ける窓口「共創フロント」に、NTTドコモから、何かAI を活用した取り組みができないかと提案があった。具体的に進めようと両者でAIの活用方法を検討する中、「MIctionaryのデータを活用した実験ができるのではないか」という話が持ち上がったのである。
AIが質問の意図を汲み取る
この実証実験には横浜市もNTTドコモもメリットを感じ、すぐに開発が始まった。
開発期間は約5カ月。MIctionaryに蓄積されていた2万語に及ぶデータベースを活用し、資源循環局とNTTドコモ、そして共フロント(政策局共創推進課)の三者で意見を出し合いながらの作業である。
「私たち資源循環局は、これまでに培った知識や市民の皆様からの問い合わせを元に意見を出し、共創推進課は市民目線で意見を出していきました」(3R 推進課の宮永祐輔氏、以下宮永氏)