Column 1 能力開発による働きがいの確保を 取り引きとしての日本の人材マネジメント
この20年あまり、企業では仕事のやり方や人的構成が大きく変わった。ワーク・ライフ・バランスやダイバーシティも進む中、さまざまな働き方をする社員で構成される組織にどう一体感を培うか。90年代から現在に至る職場環境と、会社と個人との関係の大きな変化を大藪毅氏が概説し、働きがいを高めるポイントを示す。
「質と量の合わせ技」で苦しむ
働きがいについて考える時、日本では見過ごされがちな事実がある。それは、90年代後半以降「質と量」のあらゆる面で労働環境が変化している点だ。「質」とは、組織のフラット化と仕事のチーム化が進むことで、一人当りの職務範囲が広がり、また深まったこと。スタッフは係長レベルの仕事を任される。課長クラスでは、部長からスタッフの仕事まで、プレイングマネジャーとしてこなさなければならない。それまでは、上から与えられた仕事をきちんとこなす、問題解決能力が重視されていた。
しかし今は、自分で仕事を見つけなければならず、全ての層において問題設定能力が重要となってきた。IT化の進展もあって、仕事の高度化が進んだといえる。一方、「量」とは、人員を絞り込んだ結果、1990年代の初めなら10人でやっていた仕事量を、今は6人程度で行うのが普通の状況をさす。