引っ越しは素晴らしい仕事。 自社の理念浸透と人づくりで 笑顔溢れる世の中に 文字放想氏 アップル引越センター 代表取締役社長
業界の常識を疑い、突き抜けた発想と情熱で引っ越しを変えてきたアップル引越センター。
同社を率いる文字放想氏は、「我々は単なる引越し会社ではない。
引越しをつうじて笑顔を増やすことを追求している」と語る。
異色の経歴をもち、挑戦者として新たな価値を創造し続けてきた文字氏に、もっとも大切にしているという企業理念や人づくりについて聞いた。
10代で引っ越し業界に入り21歳で起業
─初めに社長ご自身の経歴についてお聞きします。引っ越し業界に飛び込んだのは非常にお若いときだったそうですね。
文字放想氏(以下、敬称略)
私の経歴は少し変わっていて、引っ越しの仕事を始めたのは中学生のときでした。というのも、不登校の私をアルバイトで雇ってくれたのが小さな引っ越し会社だったのです。法令違反の年齢から働いていたことは大きな声では言えないのですが、引っ越しという仕事の面白さにはまり、私の引っ越し人生が始まったのも、間違いなくこのときです。その後も、現場スタッフとして引っ越し会社をいくつか経験しました。18歳のときには独立採算で引っ越し部署を任せてもらい、ゼロから年商2.5億円規模にまで成長させるなど、順調に引っ越し業界人生を歩んでいました。
しかし、20歳のときに担当部署の業績が悪化した際、その会社のオーナーが「人はいつか辞めるから、辞めるまでこき使った方が得だ」とこぼしたんです。その一言がどうしても受け入れられなくて、月収100万円を捨てて退職することにしました。
もちろん会社ですから人が辞めることはあります。しかし、どうせいつか辞めるからそれまでこき使おうなどと思って接していたら、100%辞めるでしょう。私は絶対にそんなふうに思いたくない。この経験が、人材・社員に対する想いの原点となりました。
─そして2006年、21歳のときにアップル引越センターを設立されました。起業後は順調だったのでしょうか。
文字
退職したものの、学歴がなく就職も厳しかったので、生活するために中古のトラック1台で起業しました。最初は営業から引っ越し作業まで全部私1人でやっていましたね。頑張れば頑張るほど売り上げが上がるし人も増えていくので、楽しくて走り続けていましたが、3年ほどたったころに何かが狂い始めました。
起業において「3億の壁」とよくいわれますが、3億といえばスタッフ30人くらいです。当初の1人から30人規模になり、それまで気づかなかった問題が一気に表面化してきたのがこの時期でした。スタッフは面従腹背状態で、今では考えられないようなクレームも増えていました。「人」の問題に直面したのです。
「あの会社はいい会社だね」と言うことがあると思いますが、いい会社かどうかは結局人で決まります。当時は、一緒に働きたくない人とも働かなければいけないのが苦痛で、会社を辞めようかとまで思いました。