第10回 ドローンパイロット・髙梨智樹さん 「空を飛ぶ夢」の叶え方 髙梨智樹氏 ドローンパイロット|寺田佳子氏 インストラクショナルデザイナー
人は学べる。いくつになっても、どんな職業でも。
学びによって成長を遂げる人々の軌跡と奇跡を探ります。
ドローンパイロットの髙梨智樹さんは、16 歳でレース・デビューを果たした後、国内外のドローン大会で数々の成績を収めているプロフェッショナルです。
レースだけにとどまらず、父親とともに会社を興し、操縦や空撮を幅広く手掛ける彼の原動力とは。
かつて大空に憧れた少年は今、ドローンの未来までも見据えていました。
01 大空との出会いが運命を変える
ウィィィィィーン!
その華奢な機体からは想像できないほどの豪快なプロペラ音とともに、レース用のドローンがクリスタル・ブルーの空へ飛んでいく。
いや、飛ぶというより、まるで天と地の間を瞬間移動しているような、目にもとまらぬ速さである。その華麗な飛行は、
「うわわわわ~!」
「すごぉぉぉぉ~い!」
と、空に向かって叫ぶしかないほど、美しく感動的である。
このドローンを操縦しているのが、今回のお相手の髙梨智樹さん、21歳。レース・デビューは16歳のとき。その後わずか半年の間に国内大会で優勝し、世界大会にも出場して一躍注目の人となった、日本のトップ・ドローン・パイロットである。
その智樹さんの自宅の床の間には、様々なトロフィーや賞状が所せましと並べられている。レース・パイロットとしてだけではなく、レースの腕前を生かして、産業用ドローンでも数々の「日本初」の空撮を成功させてきた実績の証である。
しかし、
「賞状は、ぼくにとってはただの紙でしかないんですよ」
えっ、どうして……?
そのわけは、小学生のころにさかのぼる。
智樹さんは体が弱く、ほとんど学校に行けなかった。授業が始まると、強い吐き気に襲われるからだ。勉強に集中できないし、同級生とはしゃぐ余裕もない。人と接すること、話すことが苦手な少年だった。
ただ、好奇心と集中力は並はずれていた。