第6回 立教大学ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)で検証中! 真の「チームアップの法則」とは 中原 淳氏 立教大学 経営学部 教授
立教大学経営学部のビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)をとおして、「チームアップ」について科学的な研究を行っている中原淳教授。研究により、どんなことが明らかにされていくのでしょう。
これまでの「チームアップ」にかかわる常識、定説の真偽や、現状まで見えてきた仮説と合わせて紹介します。
なぜいま、チームアップなのか
私が東大から立教大学経営学部に移籍し、1年がたちました。連載初回でもご紹介したように、この大学では、学生たちが4~5人のチームをつくり、企業のビジネス課題に取り組む「ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)」というリーダーシップ教育プログラムを行っており、私はその責任者を務めております。
BLP のなかでは、1年間で何百ものチーム活動が行われています。そのため、どんな組み合わせでどんな活動を行ったチームが高い成果を上げるのか、詳細かつ莫大なデータを収集、分析することができるというメリットがあります。現在は2年生向け授業をフィールドにしながら、共同研究者らとともに様々な形でチームに関する研究に取り組んでいます。
では、なぜいま、私が「チーム」に注目しているのか。一言でいうと、平成も終わり、昭和の名残ともいえる新卒一括採用、年功序列、終身雇用といった日本型雇用システムに基づいた「ザ・職場」に大きな変化の波が押し寄せていると感じるからです。働き方が多様化し、長期雇用は前提ではなくなりつつあり、また、ジョイントベンチャーなど組織の壁を超えた協業などもこれまで以上に行われるようになっています。つまりいま、私たちの働く環境は、知り合って間もない多様なメンバーと、それぞれの良さを生かしつつ、チームを動かしていかなければならなくなっているということです。さらに、ビジネススピードの加速により、以前にも増して短時間で高い成果を出すことが求められるようになっています。
こうした働く環境の変化のなかで、求められているのは「ザ・職場の動かし方」ではなく、新たなチームを形成する「チームアップ(Team up : チームづくり)」の技術です。これまでの日本企業では、新入社員が時間をかけてゆっくりと組織へ適応していく形で「組織社会化」が行われていたため、短期的にチーム形成を行う重要性はそれほど高くありませんでした。そのためか、マネジメント層やリーダー層に対してチームアップの技術を伝える研修などもあまり力を入れて行われてきませんでした。
そもそもチームアップにかかわる科学的な研究知見なども、あまり多くはありません。チームやチームアップに関する言説の多くは、実務家の経験から生み出された持論のようなものが様々な形で広まったものがほとんどです。こうした言説はビジネスパーソンの知恵の結集であり、おおいに参考になるところではありますが、科学的に検証された知見というわけではありません。
そこで私は、BLPをとおして「チーム」や「チームアップ」にかかわる方法論をもう少し科学的に検証していきたいと考えています。BLP で学生たちがチームづくりに苦戦する姿を見ていると、いろいろわかってくることもありますし、BLP のチームについてのこの1年の調査結果もまとめていく予定です。