Chapter2│CASE3 アドビ システムズ 部下を導く上司とブレない会社の姿勢が鍵 リスペクトし合える仲間とともに 仕事をつうじて成長できる仕掛け 草野 多佳子氏 千葉修司氏 坂田 彩氏 アドビ システムズ
Fortune 誌「働きたい企業ベスト100」に18年連続でランクインするなど、従業員の働きがいに関する国内外の数多のランキングで常に上位に名の挙がるアドビ。合併を繰り返しながら拡大してきた外資系IT 企業が、高い求心力を保ち続けることができるのはなぜだろうか。同社が従業員に愛され続ける理由を探った。
仲間をリスペクトし合いテクノロジーを追求する文化
「アドビは、ジョン・ワーノックとチャールズ・ゲシキーという、友達同士である2人のエンジニアが興した会社です。人を大事にして互いにリスペクトし合うこと、新しいテクノロジーを追求して成長していくことに対して強い思いがあり、それが今につながっています。営業、開発、マーケティングなど立場は違っても、社員は皆、テクノロジーが好き、製品が好きですし、互いにリスペクトし合うカルチャーがあります」
こう話すのは、人事部ビジネスパートナーの草野多佳子氏。同社が日本オフィスを開設した27年前に入社し、現在は人材配置、育成、組織デザインなどの面から、各組織のマネージャーを支援する立場にある。
テクノロジーによって世界を変えていく。消費者に新しい世界を提供することにワクワクできる人たちが集まり、同じ思いをもつ“仲間”としてリスペクトし合いながらともに成長していく、というのが同社の根幹にある姿勢だ。
「私たちは、合併・買収を繰り返しながら組織を拡大させてきましたが、その根幹がブレることはありません。統合の時は、お互いの人事同士が理解し合い、ギャップがあればそれを埋め、それから協業を進めていくというプロセスを踏みます。ビジネスの融合よりも、カルチャーの融合を大切にしているといえるかもしれません」(草野氏)
同社が2018年に買収したマーケティングオートメーション大手のマルケト出身で、現在はマルケト事業担当ビジネスパートナーを務める千葉修司氏は、こう話す。
「我々の買収の時も、米国本社のグローバル人事のトップが、コアバリューについて説明するところからすべてがスタートしました。カルチャーの融合は口で言うほど簡単ではありませんが、当社は、どこに寄り添っていくかというコアがしっかりしているし、それが実践されているので、買収される側の社員にも、自然に文化が浸透していくんです」
その「コアバリュー」(図1)は、経営トップのメッセージや各種社内通知、ポスターなど、会社からの発信物に頻繁に登場する。入社時の研修で伝えて終わりではなく、日常のなかで徹底して浸透させる方針である。
新しいものを受け入れるカルチャーがあるので、新しく加わった人たちも仲間として受け入れる。後から加わった人たちも、同社のカルチャーが好きになり、この会社でキャリアを築いていくという好循環が生まれているのだ。