第5回 強く深いコミュニケーションが 「好き」を貫き個性が輝くチームを生んだ 本橋麻里氏 ロコ・ソラーレ 代表理事
日本中を感動の渦に巻き込んだ、2018年平昌五輪女子カーリングチームの銅メダル獲得。あれから1年、ロコ・ソラーレは進化を続けていた! 新たな目標に向かって走り続ける本橋麻里さんに、当時の思いや今後について聞いた。
氷の外からチームを支える面白さ
――本橋さん率いるロコ・ソラーレが日本カーリング史上初のメダルを獲得した平昌五輪。「そだね~」や「もぐもぐタイム」も話題になりましたが、選手目線ではどんなシーンが一番印象に残っていますか。
本橋麻里氏(以下、敬称略)
私がどのプレーよりすごいと思ったのは、準決勝で対戦相手の韓国代表に決められた最後のショットです。あれをあそこで決めるなんて、圧巻という他ありません。くやしいのは当然ですが、一方で勝負を超えて、感動すら覚えましたね。あれで負けたらスカッとするし、自分たちもあんなショットを放てるようにならなきゃいけない。チームのみんなともそう話しあいました。
面白いことに、うちのチームは負けたときの方が盛り上がる。その意味で、メダルの色は銅でしたが、すごくいい色だと思っています。まだまだ頑張れる色、上を目指せる色ですから。
――過去に出場したトリノ(2006)、バンクーバー(2010)の2大会と違い、平昌五輪(2018)ではリザーブ(補欠)として、コーチ席から選手をサポートしました。チームのために、新しい役割をどう受け止めたのでしょう。
本橋
バンクーバーまでの私なら、何もしないで、ただふてくされていたでしょうね。補給食のお菓子をつまんで“ひとりもぐもぐ”でもしていたかもしれません(笑)。
でも、実際はすごく楽しかった。コーチ席から見た景色は、私が想像していたよりもずっと気づきに溢れていました。選手一人ひとりをよく観察しながら、試合の前後やハーフタイムに鼓舞したり、フォローしたり、密なコミュニケーションを図ることで、アイスの外からでもチームを勝利に導けるということがわかったんです。JD(コーチのジェームス・ダグラス・リンド氏の通称)の言動に学びながら、その面白さや奥深さに目覚めていきました。
正直、試合に出たい気持ちも、もちろんありました。それがなければ、リザーブとしてコーチ席に座っていません。客席で応援していればいいわけですから。
ただ、ロコ・ソラーレを立ち上げて、0からチームをつくっていくなかで、自分が勝つ喜びよりも、サポートに回ってみんなを勝たせる喜びの方が大きくなっていったんです。性格的に向いているなと。結婚や子育ての経験から得たものも大きかった。産休が明けてチームに戻ったら、自分でも驚くほど意識が変わっていました。