CASE.1 ロート製薬 生のコミュニケーションを通じて一人ひとりを見る採用を実現
2010 年から就活サイトを通じた一括エントリー方式を取りやめ、 電話での応募に切り替えたロート製薬(本社:大阪市生野区)。 その背景にあった問題意識と、 応募方法変更後の成果や課題について聞いた。
●背景 “とりあえず”への疑問
きっかけは、採用業務に携わるスタッフからの疑問だった。
新卒採用にあたり、かつては同社も大手就職支援サイトからネットエントリーしてもらう方法をとっており、30名の募集に対し3万人近くが申し込んできていた。そのため、説明会に呼ぶ2000人程度にまでどうやって絞り込むかが課題で、ウェブテスト、SPI、自己PRを全て読んで選ぶなど、さまざまな方法を試していた。丁寧に選びたくとも、母数が大きいだけに、どうしても“さばく”作業になりがちで、一人ひとりのことをよく知ったうえで選ぶことは不可能だ。これでは、そもそもよい素質を持ち、入社後に伸びそうな人材を見極めるのも無理だ。
そうした中、1人の担当者が、「いい人材を採用するために労を惜しむつもりはない。でも私たちは本当に適切なところに労力をかけられているのだろうか」と疑問を抱いた。
「とりあえずエントリーしておこう」と考える学生、「とりあえず大勢集めたい」と考える企業。その結果、応募者が膨大な数になり、本当に自社に興味を持った人たちを集めることができなくなる。ならば、この“とりあえず”をやめ、最初から自社に関心を持つ人たちだけを集め、生のコミュニケーション(生コミ)を通じて、自社と相性がよい人を採用する方法に変えるべきではないか。
そう考えた結果、同社は、ネットエントリーをやめ、電話での対話を通じて応募する“生コミ採用”に切り替えた。
●新しい募集方法 HPを見たうえで電話応募
人事総務部人事2グループマネージャーの矢倉芳夫氏は、応募の手段を電話にした理由をこう語る。
「電話をして応募の意思を表明するとなると、ウェブ上で気軽にボタンを押す場合と異なり、“この企業は、自分にとって本当に就職したい企業の一候補か”と考えるでしょう。そうすれば、応募者もぐっと絞られると考えたわけです」
矢倉氏のこの判断は正しかったようで、電話での応募に切り替えた2010年、応募者は800人にまで減った。
“生コミ採用”を始めるにあたり同社では、経営方針と求める人材像についてのメッセージをHP上に表示し、このメッセージに賛同した学生のみ、電話で応募するよう呼び掛けた。そして、応募してきた学生には、自社のメッセージをどれだけ理解しているか、電話での対話を通して確認したうえで説明会を案内した。