第4回 アルプスアルパイン アルプスアルパイン研修センター(東京都・大田区) 稲水伸行氏 東京大学大学院 経済学研究科 准教授
どのような空間ならば、「学び」は促進されるのか。
本連載は、オフィス学を研究する東京大学大学院経済学研究科准教授の
稲水伸行氏が企業の研修施設をめぐり、学びを促進させる工夫を解説する。
創業者のDNAを伝える
『ここはわれわれの道場である。実践と理論が噛み合う場である。人間の向上心に灯をともし、隠れた素質を叩き出し、怠惰の心に鞭打つ錬成の場である。人の一生は「学び」の連続かも知れない。……』
アルプスアルパイン研修センターのエントランスを抜けると、ロビーには「扉の言葉」が掲げられている(68ページ参照)。これは、創業者の片岡勝太郎氏が約50年前、前身の研修センターを設立した際に社員に寄せたメッセージである。
「1970年に設立した旧研修センターは老朽化したため、2018年10月に同じ場所に新しい研修センターを建て替えました。アルプス電気とアルパインが統合した象徴としてアルプスアルパイン研修センターという名称にしました。しかし、設立の意義や目的のベースには、変わらず創業者の『扉の言葉』があります。『企業が瓦解しても、個人が潰れるわけにはいかない』『自らの〈売物〉を堂々と主張できる人間に成らなくてはならない』。そんな創業者の思いにこたえる人材を育成すべく、この研修センターを活用していきたいと思っています」(人事部長の入野和之氏)
立地は、本社から歩いて5分ほどの住宅街だ。地方にある工場で働く社員が集まる際の拠点としても都合がよいため、この場所を選んだ。
また、新施設は、耐震性など安全面の配慮に加え、快適性や機能性を重視した造りになっている。