第6回 サントリーホールディングス サントリー研修センター「夢たまご」(神奈川県・川崎市) 稲水伸行氏 東京大学大学院 経済学研究科 准教授
どのような空間ならば、「学び」は促進されるのか。
本連載は、オフィス学を研究する東京大学大学院経済学研究科准教授の
稲水伸行氏が企業の研修施設をめぐり、学びを促進させる工夫を解説する。
一人ひとりの“夢の実現”を目的に
サントリー研修センター「夢たまご」は、住宅街としても人気の神奈川・武蔵小杉駅から徒歩10分ほどのところにある。もともとは瓶詰め等を行っていたサントリー多摩川工場跡地に、2004年に商品開発センターを、そして2005年に研修センターとなる夢たまごを竣工した。
「夢たまごには、『サントリーグループの夢』と『一人ひとりの夢』を実現するための孵化器(インキュベーター)でありたいという思いがこめられています。名称は社内公募により生まれたものなんですよ」
そう話すのは、夢たまごの管理等を行うサントリーパブリシティサービスサントリー研修センター夢たまご主任の浅倉りか氏。
「夢たまごは主にサントリーグループの人材育成、キャリア開発の拠点として、新人研修、育成研修、キャリア研修など様々な研修を行っています。2018年度は延べ873件の研修を行い、約2万8,000名が利用しました。ナレッジの創出、共有化を促進する施設としての位置づけも大きく、会社の定例会議や発表会で使用したり、また得意先へのアプローチとして新製品の商品説明を行うなど商談の場として使うことも多いですね」(浅倉氏)
すべての部屋にホワイトボード!ゆとりある宿泊室
地上3階建ての建物は、1階と2階の一部が会議室、2階の一部と3階が宿泊スペースとなっている。ユニークなのはその造りだ。1階中央部と2階は吹き抜けで、2階の屋根にあたる部分は芝が植えられた中庭。3階は、その中庭をぐるりと囲む形で宿泊室が配置されており、採光もよく開放的な雰囲気を醸している。
「『開かれた施設』というのも夢たまごの大きなテーマなので、廊下もガラス張りにしています。できるだけオープンで、ゆとりある空間づくりを意識しました」(浅倉氏)
宿泊室は全65室。一般的なビジネスホテルは入り口付近にトイレや風呂があるが、この宿泊室は入り口の扉を開けるとまずテーブルと椅子、そして壁にホワイトボードが設えられた作業スペースがある。