CASE 2 テルモ トップダウンからボトムアップへ 自由闊達にものが言える組織風土改革と健康経営
医療機器や医薬品、栄養補助食品等の製造・販売を行うテルモは、2009年頃から風土改革に取り組んできたが、近年ではその取り組みをトップダウンから、ボトムアップへとシフト。
特に“自由闊達にものを言える” 組織への取り組みに注力している。
● 背景1 個人の成果からチーム力重視へ
テルモが、1990 年代半ばから実践していた能力成果主義を見直し“、個人の成果”から“チームの成果”へと焦点を移したのは2009 年のこと。まずはその背景について、人事部の山本晃史部長代理に伺った。
「個人の成果にフォーカスすることで、一人ひとりが主体性を持って仕事に取り組むようになりました。しかしその一方で“チーム力で何事にも取り組む、という意識が薄れてきたのでは”という問題意識が生まれていたのです」
近年、医療の発達に伴い、市場では医薬品と医療機器を組み合わせた製品まで登場してきている。そんな状況下で新たなイノベーションを生み出すには、技術や製品ごとに分かれているさまざまな部署のメンバーが、組織の壁を越えて連携しながら各々の技術を融合させていく必要があった。
そこでスタートしたのが、問題解決のための組織横断的なプロジェクトチームを誰でも自由に編成してよい、としたチーム制度だった。
「もちろん、それまでも目的に応じて組織横断プロジェクトが発足することはありましたが、特に優秀な人材は上司が囲い込んでしまい出さない、という状況が起きていました」
そこで、制度を推進していくにあたっては、組織とは本来、ミッションの達成や課題解決のために必要な人材が集うものであり、その基本に立ち戻ろうというメッセージを、専門部署の推進室が中心となり、ことあるごとに発信していったという。
「すると、どの部署のリーダーもナンバーワン人材を気持ちよく出してくれるようになったんです」
チーム制の成功例には、ある工場の生産技術の担当者の声かけで、研究開発部門からマーケティング部門まで多彩な人材が集まり、医薬品では本来難しい包装のコストダウンを実現したといったものがある。他にも、多くの成果を上げ、成功例も発表イベント等を通じて全社で共有された。
● 背景2 次のステージへ
しかし、そのチーム制度は2011年秋に終了することになる。
「意識改革としては十分功を奏し、風通しのよい組織の土台をつくり上げたと思います。何かあれば組織横断的なチームを自発的に立ち上げることは、現在も当たり前のように行われています。
ただ、この制度は強烈なトップダウンで始まったものでした。それに全社で従うことは、結局のところ“指示待ち”なのではないか。もっと現場主体で考えていこう、ということになったのです」
こうして2011年より、中尾浩治氏の会長就任を機に新たな組織風土改革が始まった。めざすは“自由闊達に何でも話せる働きがいのある職場”で、その改革の柱は以下の4つである。
①上から変わる
②基本をしっかり(小さな積み重ね)
③多様性受容(ダイバーシティ推進)
④健康経営
具体的な取り組みを順に見ていこう。