OPINION3 人事は制度の見直しと、経営層の意識改革を マネジャーになりたい人が増える組織のつくり方 小室淑恵氏 ワーク・ライフバランス 代表取締役
続いて紹介するのは、チームの生産性向上、働き方改革という観点で、マネジャー本人とチーム、そして人事部門ができることである。約1,000社の働き方改革に関わってきた小室淑恵氏に聞いた。
持続的に生産性を高めるマネジメント技術が必要
「働き方改革関連法が成立し、残業規制の開始を間近に控えるなか、一時しのぎの打ち手で何とか乗り切ろうとしている企業が多いようです。そのしわ寄せは、残業代がつかないマネジャーに集中している。しかしそれではマネジャーが疲弊し、ひいてはチームも崩壊してしまいます」――「チーム術」や「残業ゼロ」のプロフェッショナル、小室淑恵氏は、多くの日本企業のリアルを押さえながら、マネジャー主導の生産性改善の重要性を力強く訴える。
マネジャー自身が仕事を引き取って抱え込むことで生じるのは、本人の疲弊だけではない。
「やっかいなのは、疲弊したマネジャーが不機嫌さをチームにもち込んでしまうこと。不機嫌な人が1 人いるとチームの雰囲気は一気に悪くなりますよね。だからこそマネジャーは、チームに不機嫌をもち込まず、持ち込ませず、サステナブル(持続的)に生産性を高められるようなマネジメント技術を身につける必要があるのです」(小室氏、以下同)
ステップ① まずマネジャー自身が変わる
チームの状況を変えるためには、まずマネジャーが自身の仕事のなかで、マネジメントに比重を置くようシフトしなくてはならない。しかし、優秀なマネジャーほど、仕事を抱え込む傾向にあると小室氏は言う。
「チームの戦力を足した結果が仮に35 だとすると、今年35 の畑に来年35 以上の果実は実らないという事実をマネジャー自身が認識する必要があります。マネジャーがやるべきことはチームの戦力図を描き、“成果が出せない畑を成果が出せる畑に育てていくこと”。マネジャーがメンバーの仕事を引き取る限り、チームの戦力は35 のままですが、仕事を適切な人に渡して、その人の戦力を5から7に引き上げれば、チームの戦力も上がっていきます(図1)」
マネジメントに比重を置くとは、たとえば、壁にぶつかっているメンバーをサポートしたり、メンバーの得意分野に合わせて担当業務を見直したり、チームの業務を精査して不要な仕事を削減したりする、などである。その結果、メンバーが成長し、力を発揮しやすくなれば、チームの戦力は上がり続けていく。
ステップ② チームで「在りたい姿」を明確にする
マネジャーの良い変化がメンバーにも伝わったら、次に着手すべきは「チームとしてどこに向かっていくのか」を明確にすることだ。