Part3 実例から学ぶ!① CASE 1 アクサ生命保険 女性を十把一絡げにしない! 一人ひとりに寄り添う “テーラーメイド”の育成が鍵
フランスに本社を置き、世界64の国と地域で事業を展開するアクサ生命保険は、
“ダイバーシティ&インクルージョン”を自社の重要な経営戦略と位置づけている。
しかし、そんな同社の日本法人も、2009年時点では、女性管理職比率がわずか6%にとどまっていた。
それから7年。順調に女性リーダーが育ち、2016年には、17%にまで割合が高まった。
同社が優秀な女性リーダーを増やし続ける最大の要因は、長期的な視点で、
一人ひとりに合った“テーラーメイド”の育成を行ってきたことにある。
●背景・基本的な考え方 ダイバーシティを自社の強みに
■2009年から積極推進
「AXA(アクサ)グループは、グローバル全体で、ダイバーシティ&インクルージョンを重視しています。多様な人材を登用し、個性を経営に活かしていくことを戦略的に位置づけています。社員の意識も非常に高く、リーダーはもちろん、どの階層においても、多様性を活かそうとする意識があります」
こう語るのは、執行役兼人事部門長の山下美砂氏。かつてGEにおいて、日本・アジアの女性リーダーの育成促進を担ってきた人物だ。
保険ビジネスは、その地域の慣習などを踏まえ、地域に根ざした事業を行っていく必要がある。そのため、多様性に富んだ人材がいることが、大きな強みとなる。組織に多様な価値観を受け入れる柔軟性があると、社会の変化・消費者の変化に機敏に対応でき、“選ばれる会社”になることができる。つまり、同社にとってダイバーシティは、単なる社会貢献ではなく、自社のサステナビリティ(持続可能性)に直結する重要な経営方針といえる。
日本法人においてダイバーシティ推進の取り組みが本格化したのは「コーポレートレスポンシビリティ(企業の社会的責任)」を経営戦略の中に組み込み、ダイバーシティ推進室を立ち上げた2009 年からである。
同社は、1994 年に日本に進出。バブル崩壊によっていくつもの保険会社が経営破綻する中、商工会議所を母体とする日本団体生命を2000 年に経営統合し、社員と経営基盤を引き継いだ(2005 年に合併)。当時の従業員数は、アクサ生命600人に対し、日本団体生命は8000人。小が大をのんだ形となり、結果として、日本企業的な色彩の濃い組織になっていた。
「この業界ではセールス職を中心に、女性の人数自体は少なくありません。ですが、役職が上がるほど、女性の割合は低下します。
しかし、女性がリーダーに向いていないわけではありません。例えば、一般的に、部下を育てる力は、女性のほうが長けていることが多いといわれます。女性は、『俺について来い』とか『俺の背中を見て学べ』というやり方ではなく、権限委譲をし、コーチング的アプローチで、本人たちのニーズを聞きながら丁寧に部下と接します。いったんリーダーになると、良いリーダーシップを発揮しますので、男性より弱い面は手当てし、強い面を発揮できるよう、さまざまな取り組みをしています」
●女性リーダー育成概要 3つのアプローチ
同社の女性リーダー育成の取り組みは、大きくは以下の3つの観点で進められている。