HR TREND KEYWORD 2019│テクノロジー│EdTech 2019年もムーブメントは続く EdTechがもたらす3つの教育効果 小村 俊平氏 ベネッセコーポレーション 学校カンパニー 教育イノベーション推進課 課長
近年、教育現場での導入・活用が進んでいるEdTech(Education Technology)。その効果と活用の仕方について、ベネッセコーポレーションで教育イノベーションを推進し、海外の教育事情にも詳しい小村俊平氏が語った。
EdTechで教育格差を解消
「これまでは経済的に恵まれた一部の国や人しか良い教育を受けることができず、教育格差は世界の大きな課題のひとつでした。テクノロジーを活用して、どこに住んでいても、どんな環境で育っても、良い教育が受けられる機会を提供し、格差を解消しようというのがEdTech の大きな目的のひとつです」
そう話すのは、ベネッセコーポレーションの小村俊平氏。EdTech はアメリカで、多額の学費が必要な大学教育の門戸を広げる動きから始まった。「MOOCs※1」によって、世界中どこにいても無料で一流・先端の大学の講義にアクセスすることが可能になったのだ。
「EdTech 先進国のアメリカなどに比べて日本の動きが比較的遅かったのは、日本はもともと教育格差が少ない国であったことも関係していると思います。OECDのPISA※2の調査結果を見ても、日本はすべての分野で平均得点が高く、下位層が少ないことがわかります。人口規模を考慮すると、世界一の教育水準といっていいでしょう」(小村氏、以下同)
とはいえ、日本はEdTech のムーブメントにおいて後塵を拝していたわけではない。2030年に子どもたちに求められる力やその育成方法にテクノロジーは欠かせないが、それを検討するOECDのプロジェクト「OECDEducation 2030」は、実は日本のイニシアチブで生まれている。
「OECD と文部科学省などが協力して展開した『OECD東北スクール』で、東北の中高生が東北の魅力を世界にアピールするプロジェクト学習を行いました。2年半にわたるプロジェクトの集大成として2014年にパリで行った東北復幸祭が、2日間で約15万人の来場者を集め、大成功を収めたのです。そこで、プロジェクトにかかわった大人たちは、生徒は単なる教育の対象ではなく、社会を変える力をもった主体だと実感したのがきっかけとなり、OECD Education2030がスタートしました(図)」