学び方改革4 学びをシームレスにつなぎ、内省を促す eポートフォリオ 導入のススメ
e ポートフォリオとは、高等教育や初等中等教育機関で導入が進んできている、
ICT 機器を使った学習記録システムである。
企業内教育でも、さまざまな人事データの蓄積や、経験学習の促進など、大きな応用の可能性を秘める。
そこで、東京学芸大学の森本康彦氏の講演と取材情報から※
「学び方改革」の1つの提案として紹介したい。
eポートフォリオとは何か
先生:「今日取り組んだ問題の中で、自分にとって一番大切だと思う問題をこのプリントから選んで、このタブレットで写真に撮ってみて」
生徒:カシャ(撮影)
先生:「どうしてその問題を選んだの?
生徒:「何度も間違えていた問題ができるようになったから……」
これは、ある個別指導の学習塾で先生と生徒(中学生)が、「e ポートフォリオ」を使用して学んでいる際の会話である。eポートフォリオとは、ICT 機器を用いて学習記録を蓄積していくシステムを指す。
eポートフォリオと、蓄積されたデータ分析(ラーニングアナリティクス)を専門とする東京学芸大学の森本康彦氏は、こう解説する。
「eポートフォリオのイメージで、一番分かりやすい例が、高校球児がつける『野球ノート』です。野球部員は毎日練習後にノートをつけます。その日の練習で何をして、何ができるようになり、課題は何か。これから先の目標や、将来めざすゴールについて。チームの仲間や先輩とどういうやり取りをしたのか、やり取りのなかでくやしい思いをした等、さまざまな記録や思いを、ノートに書き込みます。eポートフォリオとは、オンラインでこうした学習記録をとっていくものです」(森本氏、以下同)
eポートフォリオは、学習塾以外にも、実際に大学などの高等教育機関を中心に導入が進んでおり、授業やクラブ活動の中で使われている。
使うシステムにもよるが、授業や活動中に書き込んだプリントや、活動を記録した文章、写真や動画など、さまざまなデータを蓄積でき、検索したり並べ替えたり、後で参照したいものに印をつけたりといったことができるようになっている。
データはクラウド上に保存されるので、インターネットがつながるデバイスがあれば、どこからでもアクセスできる。そのため、生徒たちは宿題などの成果物やその他のデータを、教室外の、自宅や課外授業先からでもアップロードすることができる。