新しい学び│HCMテクノロジー HCMテクノロジーで「変化」に強い人と組織をつくる 荒井一広氏 ワークデイ 業務執行役員 マーケティング本部長
人的資本経営やその情報開示が求められるなか、人的資本をマネジメントするためのツールであるHCM(Human Capital Management)テクノロジーの重要性は高まるばかりだ。
今、企業に求められているHCMテクノロジーとはどのようなものか。また、先進企業ではどのように活用されているのか。
世界で9,500社以上、日本でも約800社に利用されているHCMツールを提供するワークデイの荒井一広氏に聞いた。
[取材・文]=増田忠英 [写真]=ワークデイ提供
HCMテクノロジーに求められる3つの役割
現在はVUCAという言葉で象徴されるように、先行きが不透明で予測困難な時代である。
「このような不確実性の時代における経営をサポートするのが、HCMテクノロジーの役割です」と話すのは、クラウド型のHCMテクノロジーを提供するワークデイで、マーケティング本部長を務める荒井一広氏。荒井氏は、現在の日本企業が直面する課題として次の3点を挙げる。
1つめは、人的資本経営への対応。人的資本経営では、人材投資に関する情報を可視化して経営に活かすとともに、外部への開示が求められる。
2つめは、個別の人事課題への対応。
「ジョブ型への移行、多様な働き方への対応、ダイバーシティの推進など、企業は様々な人事課題への対応を求められています。さらにこれらの施策を通じて従業員のエンゲージメントを向上させるには、個々の課題を数値化して把握することが不可欠です」(荒井氏、以下同)
そして3つめは、経営戦略と人材戦略のアラインメント(連携)、さらには自律型組織の実現(図1)といった重要戦略への対応だ。
「不確実性の高い時代に重要になるのがアジリティ(機敏性)です。変化に機敏に対応するには、従来は別々だった財務・非財務データをシームレスに統合して、経営戦略と連携した個別戦略を計画・実行・分析できるようにする必要があります。
また組織にも、環境変化に合わせて機敏に判断し柔軟に対応していくことのできる自律性が求められます。したがって、従来のように経営陣のみが計画を立てて結果をレビューするのではなく、ガバナンスを強化しつつ現場への権限委譲を行い、組織の誰もがデータを活用して機敏に判断し、柔軟に業務を遂行できるような環境を用意する必要があります」
これらの課題に対応できることが、HCMテクノロジーに求められる条件といえる。
最新のHCMテクノロジーとは
最新のHCMテクノロジーについて、荒井氏は次のように説明する。
「従来のツールは経営資源を計画的に管理するERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)とよばれてきましたが、我々は何かを管理するためのツールではなく、経営や業務をサポートするためのツールと位置づけています」