HR TREND KEYWORD 2019│キャリア│ジョブクラフティング 人は誰でもジョブクラフター 個人の主体性が重視される時代に必要な考え方とは 石山恒貴氏 法政大学大学院 政策創造研究科 教授
「キャリア」の分野で最後に紹介するのは、「ジョブクラフティング」だ。これまで見てきた新しいキャリア観やパラレルキャリアとも密接に関係する注目のキーワードである。ジョブクラフティングとはどのようなものだろうか。
ジョブクラフティングは「自分発」
「『ジョブクラフティング』という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、一言で言えば、個人が自分の好みに合わせて仕事の認識ややり方を変えることです。たとえば美容師が、自分の仕事を『髪を切ること』だけではなく『居心地の良い空間をつくり、お客様と親密な関係をつくる仕事』ととらえ直すことで仕事にやりがいを見いだし、お客様と喜びに満ちた関係を構築できるようになるといった事例が挙げられます」
石山氏はジョブクラフティングについてこう説明する。ジョブクラフティングという言葉は日本ではまだなじみが薄いが、自分の志向にジョブを合わせるという考え方は「キャリア学習」や「パラレルキャリア」の項で述べてきた主体的なキャリアデザインにも通じる。
ジョブクラフティングは「『やらされ感のある退屈な仕事』を『やりがいのある仕事』に変えること」だという定義もあるが、それだけではないと石山氏は指摘する。仕事の意味づけをより良いものにすることで、興味のある仕事をさらにやりがいのある仕事に変えるのもジョブクラフティングなのだ。そしてこれは、職種を問わずあらゆる仕事、あらゆる場面に適応できるという。つまり、人は誰でも潜在的なジョブクラフターなのである。
「ギャラップ社が世界各国の企業に実施したエンゲージメント調査(2017年)によると、日本は139カ国中132位とエンゲージメントが非常に低い国です。その原因は、部下の強みを理解していない上司が多いことや上司がマイクロマネジメントに陥りがちなことなどが考えられます。しかし、ジョブクラフティングは『自分発』であり、企業や上司の介入だけで成立するものではありません。そういう意味でも、日本人が取り組むべきものなのではないでしょうか」
自分の仕事を3次元でとらえる
それでは、具体的にどのようにジョブクラフティングを進めていけばいいのだろうか。ジョブクラフティングの提唱者であるイェール大学経営大学院教授のエイミー・レズネスキーとミシガン大学教授のジェーン・E・ダットンによれば、ジョブクラフティングは仕事の内容そのものを変える「タスク次元」、仕事にかかわる人間関係を変える「人間関係次元」、仕事の意味づけを変える「意味次元」の3次元から構成されるという。