HR TREND KEYWORD 2019│キャリア│キャリア学習 キャリアは生涯、発達・成長するもの キャリア教育から主体的に学ぶキャリア学習へ 石山恒貴氏 法政大学大学院 政策創造研究科 教授
人生100年時代に必要なのは、どのようなキャリア教育だろうか。雇用や人的資源管理を専門とする石山恒貴教授に、不確実性と変化に対応するための新しいキャリア観について聞いた。
人生100年時代のキャリア観
「『キャリア』と聞くと、キャリア組やキャリアアップといった肩書や昇進、もしくは職業と個人のマッチングをイメージする方が多いのではないでしょうか。それも間違いではありませんが、キャリアとは本来もっと広い意味をもつ概念なのです」
そう話すのは、法政大学大学院政策創造研究科教授の石山恒貴氏。石山氏はキャリアを考えるうえで、IoTやAIといった技術革新による第4次産業革命は無視できないと指摘する。人間の適応力をも超えるテクノロジーの進化は、働き方にも大きな変化をもたらしているからだ。
厚生労働省が2016年に発表した「働き方の未来2035」においても、2035年には企業という枠は溶け、ミッションや目的が明確なプロジェクトの塊となり、人が事業内容の変化に合わせて柔軟に企業内外を移動して働く未来が予測されている。
「このように不確実性が多く、変化の激しい現代において、ある時点で決めた職業で一生働くというのは無理な話なのです。もともと『キャリア』は、ラテン語の『車輪の跡、轍(わだち)』が語源です。馬車が道を通った後に、轍ができますよね。それはあたかも今まで歩んできた人生のようであり、轍を後にしながら馬車は進み続けます。そのように、キャリアとは生涯にわたって発達・成長するものなのです」(石山氏、以下同)
2016年に出版されて話題になった『ライフ・シフト』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著)によると、2007年生まれの日本の子どもの半分が107歳まで生きるようになるという。そうなれば、「教育→仕事→引退」というこれまで当たり前だった3ステージモデルの生き方では、引退後の余生が40年以上も続くことになる。
「『ライフ・シフト』でも言及されていたように、これからはミニ起業やパラレルキャリアなどのステージをマルチに組み合わせた生き方が試みられるようになるでしょう。そのような時代には、お金のような有形資産だけではなく、新しい経験への開かれた姿勢や多様性に富んだネットワークといった無形資産を生涯にわたって充実させていくことが、ますます重要になってきます」