Chapter1 遊びの歴史 年表で見る日本人の「遊び方」の変遷 内濱大輔氏 博報堂生活総合研究所 上席研究員
戦後、日本人は何を好み、楽しみ、そして、どう遊んできたのか。
社会背景を振り返りながら、遊びの歴史をひもといていきたい。
90年代中盤、遊び方は「モノ」から「コト」へ
「遊び方はモノからコトへ変わり、そして現在は、“トキ” を楽しむ遊び方へシフトしています」
そう話すのは、博報堂生活総合研究所上席研究員の内濱大輔氏。下部の年表を参考にしながら、遊び方の変化を考えてみたい。
まずモノの時代というのは、戦後から1990 年代頃までを指す。当時はモノが好きで、モノを所有し、それを使いながら遊んでいたという。
「60 年代までは、モノが好きといっても人並みに暮らすため、生活水準の質を上げるためのモノを所有したかったんです。ところが70 年代頃からは、ある程度生活水準が整ってきて、“ 好き”や、遊ぶ目的でモノを買うようになりました。この時代は、人と同じものではなく、希少価値のあるものを所有していることが自慢。限られたものを奪い合うというゲームで遊んでいたのです」(内濱氏、以下同)
クリスマスが恋人同士のイベントになったのも、この時代だという。プレゼントというモノを贈り合うことで楽しんでいたといえるだろう。
だが、90 年代中盤から遊び方は「モノ」から「コト」へシフトした。
「91 年バブル崩壊、95 年の阪神大震災やオウム事件、97 年山一證券破綻などがあり、これまで信じられたものが信じられない、永久に保証される確かな価値などないということに気づき始めました。モノにも価値を見いだすのが難しい。それで、人の遊び方もコト、つまり体験へとシフトしたんです。93 年にJ リーグが開幕したのですが、『ファン』ではなく『サポーター』と呼ぶようになったのは、観客も貢献することでチームに参加する、体験するという遊び方になった表れだといえます」
97 年に始まったフジロックフェスティバルも同様だ。CDを買うだけでなく、ライブに行き、自然と一体になった心地良さを体験する遊び方に変化した、と内濱氏は話す。