Chapter1 様々な分野から見る学び ④デザイン 不安・憧れ・喜びから湧き立つ 学びとは哲学であり周囲に喜びとして還元するもの 三木 健氏 大阪芸術大学 教授/デザイナー
デザインの視点から見た「学び」とは。
大阪芸術大学内の「りんごデザイン研究所」で、デザイナーの三木健氏に
「デザインの学び方」と「学び方のデザイン」について聞いた。
「りんご」を通じてデザインを学ぶ
デザインを学び始めたばかりの大学1年生向けに、「りんご」を通してデザインの基礎を教える授業を行う三木健氏。そのモチーフの通り「APPLE」と呼ばれるこの授業は、三木氏がデザイナーとして実際に仕事をするなかで見つけた学び方の“種”を1つずつ体系化し、わかりやすく組み立てたものである。
この授業では「理解→観察→想像→分解→編集→可視化」というプロセスを通して、デザインの「考え方・作り方・伝え方・学び方」を体験。そのうえで「デザインとは何か」に気づくことを目的としている。
「Designの『sign』とは、可視化するということ。あらゆるものの根源を見つめ、過不足のない情報として目に見える形にして、わかりやすさを設計することなのです。だからデザインは、どんな仕事をするうえでも重要な要素になります」(三木氏、以下同)
りんごを題材に選んだ理由もユニークだ。
「アダムとイブがかじった禁断の果実、万有引力を発見したニュートン、スティーブ・ジョブズが立ち上げたApple……発明や発見の陰には『りんご』の存在があるのではないか、という仮説を立てました。
また、世界中の誰もがりんごを知っていますが、『知っている』というのはおおむね『知覚』しているということ。『リンゴの形や色は?』と尋ねると『丸い、赤い』と答える。実際には有機的なフォルムで多様な色が含まれているのですが『認知』していないのです。『知っていると思っているもののことを、いかに知らないか』ということに気づくためにも、身近でわかりやすい題材だと思いました」
そのためこの授業は、まずりんごを切ったり、皮をむいたりして観察し、りんごについて知ることからスタートする。
プログラムには、たとえば次のようなものがある。