CASE 3 クレディセゾン マインドフルネスで「今、ここ」に集中 “夢中力”や“遊び心”を重視して 社員のS. Q.(感性・創造性)を高める
クレディセゾンでは、今、求められているのは「時代・社会・人々の心の変化を察知できる人材」だと捉え、そのために必要なのがS.Q.( 感性・創造性)だと考えている。
「何にでも情熱を持ち、本気になって取り組むことで、S.Q.は磨かれる」。
その考え方はさまざまな取り組みに現れ、風土として根づいている。
感性につながる同社の方針について、話を聞いた。
●施策 “気づき”を促すマインドフルネス
五感を研ぎ澄ませ、今まで見逃していた小さな変化に“気づく”力。これも、感性につながる重要な要素だといえる。その気づく力を磨くために有効だと考えられるのが、「マインドフルネス」である。マインドフルネスとは、例えば瞑想などによりひとつのことに集中して、“今この瞬間”に完全な注意を向けた状態を指す。自分を冷静に客観的に見つめることで、よりよい判断や行動につながり、生産性向上のみならず健康促進や人間関係を良好にするためにも有効といわれている。
このマインドフルネスを導入している企業のひとつが、クレディセゾンだ。
「社員のパフォーマンス向上や、健康経営の一環としてよいのではないか、ということで2015 年に導入しました。当時はまだ日系企業ではなじみがなかったのですが、手上げ式で興味を持っているメンバーを集め、まずは1泊2日の合宿形式で研修を行いました。現在は、参加者の負担も考慮して、通学式の研修を行っています」(戦略人事部長 松本 憲太郎氏)
■多様なワークショップ
研修は、脳科学に基づいたマインドフルネスの理論に関する講義と、ワークショップによる実践を交互に繰り返すという構成。例えば椅子に座って呼吸に集中する基本的なワークショップから始まり、頭のてっぺんからつま先まで段階的に意識を集中させていく「ボディスキャン」や、地面を踏みしめる感触を確かめながら歩く「マインドフルウォーキング」、一つひとつの素材や味を味わう「マインドフルイーティング」、思いついたことを書き留める「ジャーナリング」など、さまざまなワークショップを行う。
「食事の時、普段は出てきたものをパッと食べてしまいますが、マインドフルイーティングでは、一つひとつ食材の素材や色、香りを確かめてゆっくりいただくんです。においを嗅ぎ香りを確かめて舌に載せて、感触を感じながら咀嚼する。ゆっくり噛んで飲み込むことで、のどごしも感じることができます。今まで気にしていなかったことに意識を集中させることで、五感を研ぎ澄ませることができます」(戦略人事部人材開発課長 若松夕香氏)
最低限の相槌のみで、集中して相手の話を聴くという「マインドフルリスニング」のワークも興味深い。
「先入観を持たずに、相手の言葉一つひとつをストレートに受け止めるというものです。集中して聴いてもらえると思えば、話し手も安心して信頼して話してくれます。このような姿勢は普段のビジネスにおいても大切だと気づき、職場でのコミュニケーションにつなげている参加者も多いです」(松本氏)
■ “朝活”で体験を共有
研修後は、半日のフォローアップ研修を行うと同時に、毎週木曜日、就業前に30 分間、会議室で朝活を行っている。この時間は、マインドフルネスを実践するだけでなく、互いの体験談やマインドフルネスを習慣化するにはどうしたらいいか、メンバーで話し合う場にもなっている。
「研修で効果を感じても、日常で習慣化させるのは難しいことですから、皆がどのように行っているのか意見交換をしています。例えば通勤電車の中で行っている人がいたり、オフィスビルのロビーのソファやトイレ、移動中のエレベーターで行っている人がいたり・・・・・・マインドフルネスは、やり方も行う場所も人それぞれですから、ここでの話を参考にして、自分なりの継続の仕方を見つけているようです」(松本氏)