第2回 しなやかな革新者・今野玲央さん 感性と伝統が響き合う爪音 今野玲央氏 アーティスト|寺田佳子氏 インストラクショナルデザイナー
人は学べる。いくつになっても、どんな職業でも。
学びによって成長を遂げる人々の軌跡と奇跡を探ります。
「筝曲界に新星現る!」。LEO、こと今野玲央さんは20 歳のアーティスト。
数々の輝かしい受賞歴を持ち、メジャーデビューも果たしています。
そんな彼がさらに奥深い芸の道を切り拓くべく飛び込んだ世界とは――。
挫折の末につかんだ学び、新たな境地を聞きました。
01 あふれる想いを十三絃に託す
お箏って、こんなにダイナミックで情熱的でロマンティックでモダンで、そのうえ、こんなに表情豊かな楽器だったの?!
思わずそう呟いてしまうほど魅力的な箏曲に出逢った。
演奏はアーティスト名、LEOで昨年デビューした今野玲央さん、20歳。東京藝術大学音楽学部邦楽科現代箏曲専攻の第1期生である。
玲央さんがお箏に出逢ったのは、9歳の時。横浜インターナショナルスクールの音楽の時間だった。
「初めて聴いたのに、不思議なくらい自分にフィットする、なんとも言えない心地よさを感じたのを覚えています」
もしインターナショナルスクールに通っていなければ、もしお箏が必修でなければ、もし音楽の講師が沢井筝曲院師範のカーティス・パターソン先生でなければ、アーティストLEO は生まれなかった。
そう考えると、まさに“運命の出逢い”だったのである。
お箏というと、キチンと正座して格式張って演奏するもの、心がしびれる前に足がしびれそうなもの、そんな堅苦しいイメージがあるが、シカゴ出身のカーティス先生の指導は違った。教える言葉は英語。教える場所はさまざまな国の子どもたちの笑顔があふれる教室。「音楽は楽しむことが一番大事だよ」が口癖で、一人ひとりの個性を伸ばすことを第一に、のびのびと自由に演奏させた。
そんな先生の元で、お箏にすっかり魅せられた玲央さんは、やがて週2回の授業だけでは物足りなくて、お昼休みや放課後にも音楽室で練習をするようになる。
それにしても、なぜ、そこまで夢中になれたのだろう?
「自分の想いを上手く伝えられないもどかしさを感じていたからかもしれませんね」