Chapter1 識者の視点~出る杭の育て方|OPINION 1 杭が出るのは槌次第 出るべき杭と出なくていい杭 玄田有史氏 東京大学 社会科学研究所 教授
どうしたら、出る杭を見つけ、育てることができるのか。
「杭は槌があるからこそ、出る杭になれる」という玄田氏に、先輩や上司の“ 槌”としての在り方、若手の“ 杭”としての在方を聞いた。
身を守ることに必死な若者たち
「去年まで学部の授業を担当していたときにちょっとショックだったことがありました。“働く”ことがいつからこんなに恐いことになってしまったんだろう、と」
そう話すのは東京大学社会科学研究所教授の玄田有史氏。若者の“出る杭事情”について尋ねたときだった。
「私が教壇に立ち始めた90年代頃、学生たちが抱えていたのは『どうすれば自分らしく働けるのか』など、多少は未来に希望が感じられる悩みでした。今はブラック企業や若者の過労死等が深刻視され『働くことからどうすれば身を守ることができるか』といったことが主になっているように思います」(玄田氏、以下同)
身の危険を感じるようでは、杭も飛び出ている場合ではない。だが、そもそも「杭だけでは、杭になれない」と玄田氏は持論を展開する。
「杭は木槌や金鎚にしっかり打たれることで深く刺さり、初めて杭になる。杭も要は槌次第です。杭が杭として出るか出ないかは、結局打ち方次第なんです」
大人は“槌”としてどう在るべきか
若手社員を杭とするならば、“槌”とは、上司や先輩、組織など、彼らを取り巻く人々や環境が当てはまる。出る杭を見いだすため、そして伸ばすため、槌はどう在るべきか。