第1回 ATD-ICE2018から見る シフトの方向性と今日的テーマ 嶋村伸明氏 ATD-IMNJ(インターナショナル・メンバー・ネットワーク・ジャパン)副代表/リクルートマネジメントソリューションズ 事業開発部 主任研究員
米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJが、海外の新潮流を、変革へのヒントとして解説します。
創立75周年の記念大会
2018年国際大会(ATD-ICE2018)はATD の創立75周年の記念大会として、5月6日~9日にカリフォルニア州サンディエゴで開催されました。爽やかな海辺に面したコンベンションセンターには世界93カ国から13,000人が参加。近年では最大規模となり、日本からの参加者も269名と過去最多でした。基調講演者にバラク・オバマ前米国大統領を迎え、会場中心の明るく広いアトリウムには1943年から現在までのATD の軌跡をたどる展示ブースが設けられるなど、記念大会にふさわしい内容となりました。
オバマ氏は何を語ったか
毎年、様々な領域のリーダーが3名ほど登壇する基調講演ですが、今年はなんといってもオバマ前大統領です。当日は早朝から会場の回りに長蛇の列ができ、開場時間が繰り上げられるなど前代未聞の事態も起こる中、オバマ氏が登場するや会場はしばらくの間拍手と大歓声に包まれました。ATD プレジデントCEO トニー・ビンガム氏との対談形式でしたが、ときにユーモアを交えながらも自身の考えを率直に、かつ思慮深く言葉を選びながら話すオバマ氏の人間性に会場中が引き込まれていきました。自身の人生のストーリーを紐解きながらオバマ氏は、社会が教育に投資し続けること、大事なのは「何になりたいか」ではなく「何をしたいか」であり、自分が情熱を感じられることを見つけること、透明性があり有効なデータがフィードバックされる環境をチームにつくり経験から学ぶこと、そして、バリューを実践し継承する重要性を語ったうえで、一人ひとりが「誰かの役に立つ責任を引き受け、1日1日をより良い状態にすることで世界は良くなっていく」とメッセージを送りました。一言ひと言から価値観と信条が感じられ、まさに「オーセンティック・リーダーシップ(自分らしさのリーダーシップ)」を体感した時間でした。