TOPIC① シンポジウム『強いリーダーの輩出を目指して』レポート今、日本に求められる“ 強いリーダー”をいかに育てるか
2011年10月27日東京大学武田ホールで、一般社団法人強いリーダー育成研究会の設立を記念して、シンポジウム『強いリーダーの輩出を目指して』が開かれ、約200名が集まった。登壇者3名はいずれも、3.11後の日本に強い危機感を抱き、リーダーの要件、そしてどのようにリーダーを育てていくべきかを三者三様の視点から語った。
基調講演「 リーダーシップとマネジメント」~ 難しい二つのプロジェクトの実例を通して~宮田 秀明 氏 東京大学 工学系研究科システム創成学専攻 教授
リーダーには、何が必要なのだろうか――。宮田氏は数々のプロジェクトをリードしてきた体験を踏まえ、以下の10ポイントを挙げ、リーダーに必要な能力を解説した。
1.価値と価値の連鎖・循環を理解することができる
2.全体像を理解することができる
3.未来予測ができる
4.ビジネスモデルを変えるために難しい決断を行って実行できる
5.創造に挑戦することができる
6.明確なビジョンと目標をもち、メンバーに共有させることができる
7.変化をおそれず自ら成長することができる
8.メンバーを成長させることができる
9.メンバーと、尊敬と信頼を持ち合うことができる
10.成功と進歩を信じることができる
チーム構造を間違えて成功するプロジェクトはない
多くのプロジェクトに取り組み、それらを成功へと導いてきた宮田氏だが、中でも特に難しいと感じたプロジェクトが2つ。1つは、「アメリカズ・カップ・プロジェクト(アメリカズカップ2000)」であり、もう1つは、今まさに取り組んでいる「東北・復興プロジェクト」だという。
アメリカズ・カップとは、ヨット(セイルボート)のレースである。だが、単なるヨットレースではない。これは、ヨットを介し、マネジメントであり、テクノロジーであり、チームワークであり、資金であり――それら全てをもって競う国際競技プロジェクトだといわれている。
宮田氏に要求されたのは、そのレースで日本を優勝させることだった。だが、状況は最悪だった。参加国中、ヨット文化が未確立で、最も浸透していない国が日本だった。その日本を優勝させるというプロジェクトの牽引がいかに困難な役割かは、想像に難くない。「成功のために必要な4要素は、テクノロジー、資金、チームワーク、そしてマネジメント。その掛け算が成果をもたらすのです。ところが与えられた資金は競合チームの3分の1。人材も明らかに層が薄かったのです」。