第1回 日立総合経営研修所 我孫子研修所(千葉県・我孫子市) 稲水伸行氏 東京大学大学院 経済学研究科 准教授
どのような空間ならば、「学び」は促進されるのか。
オフィス学を研究する東京大学大学院経済学研究科准教授の稲水伸行氏が
企業の研修施設やオフィスをめぐり、学びを促進させる工夫を解説する。
グローバルに対応する施設へ
「日本初の重役学校」として知られる日立総合経営研修所の我孫子研修所。かつては白樺派の文人が住み、“北の鎌倉”ともいわれたこの地に1961年、日立製作所の創業50周年を記念し、自社の管理職を対象とした研修施設として設立された。東京ドーム1つ分という広大な敷地に、研修棟と3つの宿泊棟が建つ。
研修棟はグローバル人材の受け入れに対応させるため、また、東日本大震災により一部損壊したため、2015年に全面リニューアルを行った。
「設計のコンセプトは『研修への集中と多様な対話の誘発』です。主に日立グループの役員を含む部課長以上を対象とした事業戦略やリーダーシップの研修、また、海外のリーダー候補の選抜研修等を行っています」(ラーニングセンタ長の長村岳勇氏)
研修に集中できる仕掛け
「研修への集中」を促す仕掛けのひとつが、建物のエントランスを潜り抜けたすぐ先にある通路である(次ページ写真)。両脇の壁は白く、天井は黒い。そして通路の先には、照明に照らされた真っ赤な壁。