Chapter 2−1 探究学習事例 京都市立堀川高校 学ぶ意欲に火をつける 「たのしんどい」 探究学習 堀川高校
実際の教育現場ではどのような探究学習が行われているのか。
まず紹介するのは、京都市立堀川高校である。
同校は1999年に「探究科」と呼ばれる専門学科を新設、3年後に同科1期生の国公立大学現役合格者は前年の約20倍となった。
“ 堀川の奇跡” を生み出した同校の「探究学習」について聞いた。
自立する18歳を育む探究学習
「そのテーマでは、抽象的では?もっと具体化したほうがいいよ」
「国際比較のデータがあるんじゃないかな」
「残業時間にはどれくらい男女差があるの?」
1人の生徒が発表を終えると、机を円形に並べて耳を傾けていた生徒たちが次々と意見を飛ばす。
これは堀川高校の「探究基礎」授業の一幕である。同校では、入学してから1年半、この科目に取り組む。1年前期をHOP(探究の型を学ぶ)、1年後期をSTEP(探究の術を身につける)、2年前期をJUMP(探究の道を知る)と位置づけ、HOP では探究活動の進め方や論文の書き方、STEPでは専門分野固有の研究手法を学び、JUMPでは論文作成を行う。冒頭は、2年生になったばかりのゼミのメンバーが、これから1人ずつ取り組む論文のテーマについて検討している場面だ。
探究基礎の授業自体は週1回各2時間だが、生徒たちは授業以外の時間とかなりの労力をこの科目に費やす。そんな探究の授業を続ける根本には、「自立する18歳を育むこと」という同校の最高目標がある。
「社会に出れば、答えが用意されていない問題に対処しなければなりません。その際に求められる自分なりの答えを根拠と共に設定する力を身につけることが、探究の授業の目的です。社会で困難にぶつかっても乗り越えるには、答えがない問いや複数答えがある問いを独力で設定し、自分なりに答えを作って伝えるというプロセスを学び、習得することが大切だと考えています」(谷内秀一校長、以下同)