Chapter1 探究学習とは “想定外”と“板挟み”を乗り越え生きる力を養う 「探究学習」 とは 鈴木 寛氏 文部科学大臣 補佐官
今、教育現場で導入が進められている探究学習とは、どのようなものなのか。
そして、なぜ今、必要とされるのか。学校教育の第一人者に話を聞いた。
探究学習とは
――2020年の教育改革で導入される「探究学習」とは、どのようなものでしょうか。
鈴木寛氏(以下、敬称略)
今回の教育改革では、小中高の学習指導要領の改訂、大学入学試験の改革等が行われます。特に大学入学試験の改革は、1979年の共通一次試験導入以来となる約40年ぶりの大改革です。また、高校では、「理数探究」「総合的な探究」「歴史総合」「地理総合」「公共」などの科目が新設されます。
「探究」とは、まさに読んで字のごとく、自然界や実社会に存在する課題を基に、知識やスキルを統合的に活用しながら、問題の構造を深く理解し、その課題の解決のために、思考や判断を繰り返していくことです。そのプロセスの中で主体的に、そして多様な他者と協力しながら、積極的に学ぶ姿勢・態度や人間性を身につけていきます。ある種のプロジェクト的な学びといえます。
工場モデルからの脱却
――なぜ今、探究学習が求められているのですか。
鈴木
背景には、「シンギュラリティ(技術的特異点)」があります。2040年代半ばには、AI(人工知能)が人間の知能を超えていくと言われており、それを待つまでもなく、デジタルテクノロジーの急速な進歩により、人間の仕事がどんどんAIに取って代わられていきます。ですから、自ら新しい仕事を作り出していかなければなりません。
OECD(経済協力開発機構)でも、「教育2030」というプロジェクトが進められており、そこでは、「ナレッジ、スキルは当然必要だが、より重要なのはアティテュード(態度)とバリュー(価値観)」だと言われています。特に重要なのが、以下の3点です。
これらの力を身につける手法が、探究学習やプロジェクトベーストラーニング、アクティブラーニングです。これからの学びは、メモライゼーション(暗記)からセルフマネージ(主体的な学習)、そして、エラボレーション・ストラテジー(探究的な学び)へと変わっていく必要があります。