事業変革リーダー 3つの資質 ISSUE1 事業変革リーダーの要件 今のやり方を変えられる 事業変革リーダーはここが違う 鬼頭孝幸氏 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員
事業を拡大・変革するリーダーとは、具体的にはどのような人材なのか。
事業戦略の立案・実行支援に豊富な実績を持つ鬼頭孝幸氏に、成功を収められるリーダーの特徴や、人事・人材開発部門ができる施策について聞いた。
業績不振を乗り越えるには
リーダーの資質を見る前に、現代の事業責任者が起こすべき変革の方向性を押さえておきたい。鬼頭氏は、昨今、事業が停滞している企業のボトルネックを「市場が変化していて、やり方を大きく変えなくてはならない中、従来の勝ちパターンに固執しているケースが多い」と指摘する。
「例えばアパレル業界は近年、市場構造が大きく変わった業界のひとつです。かつては、百貨店などで売り場面積をどれだけ押さえられるかが勝負だったのですが、今はお客様にどういう価値を提供できるかという本質的なところが問われる時代です。既に販路は強みではなくなっているのですが、販路が強かった企業ほど、そこに固執してしまう傾向があります」(鬼頭氏、以下同)
どうにかしようとしているものの、対症療法になっていることも多い。
「店舗数や商品数を増やすことで売り上げの減少を穴埋めしているケースが多々あります。しかし、業績不振の本質的な原因をさかのぼることなしに対症療法を繰り返しても、真の課題解決にはつながりません。また、成長企業のビジネスモデルを深く考えずに模倣しようとするのもありがちなパターンです」
事業変革リーダー3つの資質
では、そうした状況から停滞を抜け出し好転させるリーダー像とは。これまで多くのリーダーと接してきた鬼頭氏は、主に下記の3つの資質を備えている人材が望ましいという。
【資質1】定量的に現状を把握する力
まず求められるのは、自社の強みや弱み、外部の機会や脅威を、客観的かつ冷静に俯瞰できる力である。
「特に、定量的に現状を把握する力が重要です。定量的といっても財務諸表の数字だけではありません。マーケット状況や生産性、顧客の傾向分析に至るまで、客観的に測る物差しを持っているかどうかです。我々コンサルタントがクライアントからご相談をいただく際にも『他社と比べてコスト比率がこれくらいなので、この水準を目指したい』などと数字で示していただくことがあります。そういう方こそ、実際に変革を成し遂げるのです」
この力は、現状分析や課題解決に欠かせない。停滞の本質的な原因を突き詰め、周りを説得するには、数字で語ることが最も効果的だからだ。