外国人材の心をワシづかみ! 日本発のマネジメント 第7回 対話型リーダーシップ・プロセスで多文化チームを導く
世界の人材争奪戦において遅れをとる日本。
打開策は現地の人々のより深い理解、そして日本企業ならではの育成、伝統にある―。
異文化マネジメントに精通する筆者が、ASEANを中心としたグローバル人材にまつわる問題の解決法を解説します。
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日本人にできる唯一の行動
先月号でご紹介した「エンゲージメント」のキーポイントは何だったでしょうか。簡単にいえば、導きたい相手に「当事者意識(Ownership)」を感じさせ、主体的な行動変化を促すことでした。エンゲージメントは、部下と対話しながらリーダーシップを発揮するうえで最重要といえる要素です。そこで今回は、エンゲージメントをはじめとする、包括的なリーダーシップを発揮するプロセスについてご説明しましょう。
異文化チームを率いる際に役立つこのプロセスを、私は「対話型リーダーシップ・プロセス: Dialogic Leadershi p Process (DLP )」(図1)と呼んでいます。
DLPは、私が研修やコンサルティングを行っている、世界4極(欧米中ア)の日系企業の現地人管理者向けアセスメント調査に基づいています(※詳細は『アジア発 異文化マネジメントガイド』PHP研究所、『ワーキング・トゥゲザー』アスク出版)。
具体的には、「あなたが能力を最大限発揮するために、日本人赴任者にできる唯一のリーダーシップ行動は何ですか」「日本人赴任者があなたにとってさらに良きリーダーとなるために、彼らがするべき唯一の行動は何ですか」といった質問に対して寄せられた、約900 名の肉声から抽出しました。
部下と向き合う「対話型リーダーシップ」がなぜ今、必要なのでしょうか。世界4極の中でもASEAN+中国、香港の現地人マネジャーの声に耳を傾けて分かったのは、彼らとの深い対話なくして、その思いを実現することはできないということでした。また、日本人赴任者の多くは、「telling(指示)」はできても、「di al ogue(対話)」が苦手なことも明らかです。
対話型リーダーシップのプロセスは全部で5つあります(図 2、3)。以下より順に見ていきましょう。
1.意味を伝える
第1のプロセスは、「Communicating(意味を伝える)」。仕事の仕方、品質の捉え方など前提を明確に定義し、意味を伝達することです。
ゴールを示すことはリーダーの重要な仕事ですから、達成目標については数値的ゴールに加え、質的なイメージを伝える必要があります。比喩を駆使したり、関係者の満足した表情を描いてみせたりと、情感を盛り込んで相手を巻き込みましょう。