J.H.倶楽部

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Learning Design 2018年09月刊

スペシャルインタビュー 私のリーダー論 リーダーシップは “良い失敗から学ぶ”ことで 誰しも磨くことができる

オープンイノベーションで次世代の国富を担う産業を育成・創出することを目的に設立された産業革新機構。
会長を務める志賀俊之氏は、日産自動車の最高執行責任者(COO)として変革の先頭に立ってきた経験を持つ。
志賀氏に、日本の産業界における変革の必要性と、今求められるリーダーシップについて聞いた。

プロフィール
志賀俊之(しが としゆき)氏
産業革新機構 代表取締役会長

生年月日 1953年9月16日(64歳)
出身校 大阪府立大学経済学部
主な経歴
1976年4月 日産自動車入社
2000年4月 同社常務執行役員
2005年4月 同社最高執行責任者(COO)
2005年6月 同社代表取締役COO
2013年11月 同社代表取締役副会長
2015年6月 同社取締役副会長
2015年6月 産業革新機構会長就任
2017年6月 日産自動車取締役
現在に至る

企業プロフィール
株式会社産業革新機構
2009年、産業や組織の壁を越えて、オープンイノベーションにより次世代の国富を担う産業を育成・創出することを目的に設立された官民ファンド。
出資金:3,000億1,000万円投資決定件数:133件(累計)支援決定金額:1兆938億円(累計)( 2018年7月末現在)

取材・文/谷口梨花 写真/中山博敬

日本企業が抱える「不都合な真実」

─産業革新機構は官民ファンドとして日本産業の構造的な課題解決を目指していますが、今の日本の産業界をどう捉えていますか。

志賀俊之氏(以下、敬称略)

最近特に問題に感じているのが、日本の産業競争力の低下です。

例えば、IMDの世界競争力ランキングで日本はバブル期には1位でしたが、2018年は25位まで後退。2017年の日本の労働生産性はOECD 加盟35カ国中20位で、先進7カ国では最下位が続いています。イノベーション力を比較したグローバル・イノベーション・インデックス2017では14位です。企業の新陳代謝も良くありません。2018年7月時点の時価総額ランキングを見ると、アメリカはApple、Amazon、Alphabet(Google の持ち株会社)が上位を占めている。GEやコカ・コーラが上位を占めていた20年前とは様変わりしています。一方、日本では上位ランク企業がほとんど変わっていない。これらが示しているのは、今の日本企業が抱える「不都合な真実」に他なりません。

不都合な真実の背景に何があるのか。私は、企業のトップに課題があると考えています。例えば、日本の経営者はほとんどが生え抜き社長です。彼らはリスクを取ってチャレンジしづらいし、横並び志向も強いので、イノベーションが起こりにくくなるのです。

近年、欧米に倣(なら)ってトップダウンがもてはやされていますが、トップダウンはトップにマネジメントやリーダーシップの力量や経験があって初めて成り立つものです。それがないのにトップダウンをしても、現場は混乱するばかりです。

GDP世界第3位であり、教育水準も高い日本の産業競争力が、なぜここまで落ちてしまったのか。我々はこの不都合な真実について、もっと真剣に考えなければいけないと思います。

─今の日本の産業界には何が足りないのでしょうか。

志賀

結局は人材に行きつくのですが、それ以前に、今の日本には3つの要素が欠けています。

1つめは「ダイバーシティ」。海外では、世界中から集まった多様な人材が侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を交わし、切磋琢磨してイノベーションを生んでいます。ところが日本では同じような学歴の同質な社員たちが阿吽(あうん)の呼吸で仕事をする。化学反応など起こりっこありません。

2つめは「アントレプレナーシップ」。言い換えれば、自ら事業を興してお金を稼ぐ力です。しかし、日本人の多くは偏差値の高い学校を卒業して有名企業に入り、入社後は上司に気に入られ出世することを目指しています。産業の新陳代謝を引き起こすようなベンチャー企業が生まれないのも道理でしょう。

3つめは、「リーダーシップ」。日本では、謙虚さや協調性ばかり教育するので、リーダーシップの何たるかを知らないまま大人になる人が多いのです。

リーダーシップは後天的に身につけられる

─では、真のリーダーとはどのような人だとお考えですか。

志賀

一言でいえば、正解のない時代に、自分で答えを考え、リスクを取ってチャレンジできる人です。

しかし、小学校から正解を覚える教育を受けてきた日本人は、正解のない問題について考え、意見を述べるのが苦手です。日産時代も議論の場で発言しているのは外国人ばかりという光景をよく見ました。だから「グローバル化すればするほど埋没する日本人」と私は言っています。

最近、日本でもようやく教育改革が進み、知識思考だけでなく、論理的思考や創造的思考を育てようという動きが出てきましたが、今、求められているのは、まさに正解がないところから考える創造的思考です。言い換えれば「デザイン思考」ですね。

よく使う例ですが、「フランシスコ・ザビエルが来日したのは何年か」と問うのは知識思考です。一方、「ザビエルが来たことで、日本はどんな影響を受けたのか」について考えさせるのが論理的思考です。

デザイン思考では「あなたがザビエルなら、どうやって日本にキリスト教を広めますか」と問います。ザビエルは日本に上陸すると、庶民を相手に辻説法したりせず、まず薩摩藩主、島津貴久に謁見し、宣教の許可を得ました。では、自分ならどうするか。こんなふうに自分の頭で考えるのは楽しいことです。正解がありませんから。真のリーダーはこういうデザイン思考が得意です。

─リーダーシップを後から身につけることはできますか。

志賀

もちろんです。私自身、カルロス・ゴーンからリーダーシップを学びました。ゴーンとは同い年で、お互い45歳の時に出会いました。以来、長年一緒に仕事をしてきましたが、世界でもトップクラスのビジネスリーダーだと思います。ハイブリッド車全盛の時代に、「電気自動車で行く」と宣言したり、日産の弱みだったアジア市場の開拓のために三菱自動車への資本参加を決断したりと、強いリーダーシップを発揮しました。

私は、抵抗に遭ってもチェンジリーダーであり続ける彼の姿に刺激を受け、リーダーシップの何たるかを学んだのです。彼と出会っていなかったら、グローバル企業のトップになることはなかったでしょう。よく、リーダーシップはカリスマ性や生まれ持った才能と結びつけて語られますが、そうではありません。

私は、「リーダーシップ・ジャーニー」という言葉が好きです。組織を動かすことに目覚める瞬間は誰にでも訪れるもの。自分のリーダーシップを磨き、成長していく過程こそがリーダーシップ・ジャーニーであり、誰もが歩める道と信じています。

─リーダーシップを磨いていくには何かコツがあるのでしょうか。

志賀

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